武内夏暉のボールはなぜ打ちづらい? トレーナーが解説する西武ドラ1ルーキーの投球のメカニクス
2023年のドラフト会議で最多タイの3球団から1位指名を受け、評判どおりのピッチングを披露しているのが、國學院大学から西武に入団した左腕の武内夏暉だ。
4月3日、開幕5戦目のオリックス戦でプロ初先発初勝利を飾ると、ここまで(5月10日時点/以下同)4試合に投げて2勝0敗、防御率1.55。登板間隔を空けて起用されているため規定投球回数には達していないが、4試合ともクオリティスタート(※)を達成している。
※先発投手が6イニング以上を投げて、自責点を3点以下に抑えること
プロ初登板から好投を続ける西武のドラフト1位ルーキー・武内夏暉 photo by Koike Yoshihiroこの記事に関連する写真を見る
【ベテラン捕手も驚く修正力と対応力】
「徐々にレベルアップしているというか、対応力にびっくりしています」
4月10日のロッテ戦後にそう話したのは、今季6年ぶりに西武に復帰し、オープン戦から武内とコンビを組む捕手の炭谷銀仁朗だ。かつて菊池雄星(現・ブルージェイズ)を成長させたベテラン捕手の言葉に耳を傾けると、武内の非凡さが伝わってくる。
そのひとつが修正力だ。7回を4安打、2失点に抑えた4月10日のロッテ戦は序盤、左バッターに対してツーシームとチェンジアップが抜け気味になるなど、決して本調子ではなかった。
「でも球の強さはあったし、中盤以降は修正してきました。『(チェンジアップを)外に構えて、外で使おうか』と言ったら、『はい、できます』と。それでポランコを三振に打ちとりましたからね。大したもんですよ」
そう炭谷が語るのは5回のシーンだ。昨季本塁打王の左打者のグレゴリー・ポランコに対して、ツーシーム、スライダー、カーブで1ボール2ストライクとすると、最後は外角低めに落ちるチェンジアップで空振り三振に仕留めた。
一般的に左投手が左打者にチェンジアップを投げると、ストレートより緩いシュート回転のボールがいくために打たれやすいと言われる。だが、武内が左打者の外角にチェンジアップが使えるのは、抜群の制球力を有していることと、その軌道に関係がある。
「ふつうチェンジアップは落ちると思うんですけど、伸びるようなイメージで投げています」
本人がそう語るように、武内のチェンジアップは打者に近づいてからストンと落ちていく。決して"緩い球"ではないのだ。
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プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。