武内夏暉のボールはなぜ打ちづらい? トレーナーが解説する西武ドラ1ルーキーの投球のメカニクス (3ページ目)
そしてフルカウントからの7球目、外角のカーブで柳田を空振りの三振に仕留めた。
武内は「左バッターの内角へのストレートは自信がある」と言うが、恐ろしいほどの状況判断力と落ち着きぶりだった。なぜ、あそこまで冷静に投げられるのか。試合翌日、武内に聞いてみた。
「ピンチでも平常心なのはずっとそうです。性格的にそうなるんだと思います」
武内が卒業した國學院大学野球部の鳥山泰孝監督は「先で伸びる人材育成」を掲げ、心身の土台づくりを徹底してチームを強化してきた。武内がピンチに動じないメンタリティを身につけるうえで、そうしたバックボーンも関係があるという。
「マウンドで感情を出さずに淡々としているのは大学からです。鳥山監督はいろんなミーティングをしてきました。人間性などですね。そうしたことも関係あると思います」
【まだ伸びしろがある】
186センチ、90キロの長身左腕投手は高いレベルの心技体を備え、ドラフト前から「完成度は群を抜く」と評されてきた。早くもその実力を示している格好だが、少し異なる見方をする者がいる。2022年7月、武内の大学3年時から個人指導している『DIMENSIONING』の北川雄介トレーナーだ。
「武内くんは、伸びしろがまだかなり残されていると思います。今年に入って体重が4、5キロ増えていますし。すごくいいピッチャーだけど、完成はしていません」
北川トレーナーは個人の感覚や思考法を把握し、身体の特徴と組み合わせて伸ばしていく独特のアプローチで、メジャーリーガーからNPBの選手、ドラフト候補まで多くの選手から信頼を寄せられている。
では、武内の伸びしろはどこにあると見ているのか。
「体のフレームに対して、筋肉を増やしていくことがひとつ。もうひとつは、もう少し胸郭を柔らかく動かせるようになれば(リリースまでの)距離がとれるので、そこでもう少し球速も出せるかなと。本人も自覚していて、だいぶ動くようになってきています。そこがプロ入りして3、4カ月で変わってきているところですね」
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