武内夏暉のボールはなぜ打ちづらい? トレーナーが解説する西武ドラ1ルーキーの投球のメカニクス (2ページ目)
4月10日のロッテ戦では、もうひとつ非凡な能力を見せた。それが対応力だ。炭谷が振り返る。
「打者の膝もとに曲がり系の球で空振りを取りにいくのは課題のひとつです。前回のオリックス戦(4月3日)では、右バッターの膝もとへスライダーを1球も使っていないなかで『今日は使うよ』と言って、カットボールとスライダーを投げました。対応力にびっくりしましたね」
右バッターの膝もとにスライダーやカットボールを投げることで、外角のストレートやツーシーム、チェンジアップも生きてくる。こうした攻めをすることで、武内は全球種を決め球として生かしている。
【大学時代から変わらぬ平常心】
そのうえで軸となるのが、最速154キロのストレートだ。
「今日はイメージどおりのリードができました。そこに投げきってくれたルーキー、すごいっすね」
炭谷がそう声を弾ませたのが、5月3日のソフトバンク戦のあとだった。3番・柳田悠岐、4番・山川穂高、5番・近藤健介を中心とする強力打線に対し、武内と炭谷のバッテリーはカーブを効果的に使った。
「カーブをもっと使っていこうと話していました。武内も『自信を持っている』と話していたので。どちらかと言うと、真っすぐ、ツーシーム、チェンジアップに目が行きがちですけど、カーブもいい球ですよ」
0対0の6回表、武内は二死三塁のピンチを背負った。打席には3番の柳田。目を見張ったのは2ボール2ストライクからの6球目、内角に投じた149キロのストレートだ。
「本当に厳しく投げました」
武内が振り返ったように、この1球は柳田の体の近くに外れた。
「あそこでそうやって考えてくれているのがすばらしいこと。僕は武内のインコースを信用しているので」
炭谷がそう話したように、ともすれば厳しく攻めようとするあまり力が入って甘くなり、痛打されることも珍しくない状況だ。だが、炭谷の意図どおりの球が投げ込まれた。
「あの球は外れても全然OK。はなから『ボール球を投げろ』ではなく、『勝負しにいくなかで甘くならないように』という話なので......」
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