指揮官の「予言」どおりに元オリックスの小川博文はプロ入り「すべて言われたとおりで恐ろしい」 (4ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Sankei Visual

 会社側から見れば、大事な選手が抜け、戦力減退につながるドラフト指名。とくにプリンスは高校出の選手が成長してプロ入りするケースが多く、チームの完成期がなかった。それでも、石山は監督として「プリンスホテルは高校生が育つと評価されればいい」と考えていたという。

「それにしても、プリンスで4年間やって、オリンピックに出て、プロ。すべて石山さんに言われたとおりになっているの、恐ろしいんですよ。ふつう『そんなんならんやん!』って思いますもん」

 予言を現実にした小川はオリックスで1年目から遊撃のレギュラーを獲り、91年にベストナインを受賞して球宴に3度出場。95年のリーグ優勝、96年の日本一に大きく貢献した。2001年から横浜ベイスターズ(現・DeNA)で4年間プレーして引退となったが、強靭な体で休まず続けた16年間の現役生活。通算1720試合で1406安打、100本塁打、597打点という成績を残した。

 引退後はオリックス、DeNAで打撃コーチを歴任し、現在はオリックスで社会貢献活動に携わり、バファローズジュニアの監督も務める。その一方で野球解説者としても活躍。すべて意義のある仕事で、何も不満はない。だが、プリンスホテル入社前に断念した高校野球の監督を、あらためて目指したい気持ちもある。

「やっぱり僕は勝負師なのかなと、自分で思う時がある。なんかウズウズしてしゃあない時があるんです。もう一度、グラウンドで花を咲かせられたらいいですね」

(=敬称略)

プロフィール

  • 高橋安幸

    高橋安幸 (たかはし・やすゆき)

    1965年、新潟県生まれ。 ベースボールライター。 日本大学芸術学部卒業。 出版社勤務を経てフリーランスとなり、雑誌「野球小僧」(現「野球太郎」)の創刊に参加。 主に昭和から平成にかけてのプロ野球をテーマとして精力的に取材・執筆する。 著書に『増補改訂版 伝説のプロ野球選手に会いに行く 球界黎明期編』(廣済堂文庫)、『根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男』(集英社文庫)など

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