斎藤佑樹のプロ1年目「この世界で勝つのは大変」と痛感させられたダルビッシュ有の衝撃 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 僕の思い描くパワーピッチャーというのは、ストレートが速くて、変化球でも空振り三振がとれて......つまりダルビッシュさんのようなピッチャーですよね。じゃあ、大学時代の自分がそうだったかと言われると、大石(達也、早大〜ライオンズ)よりスピードは出ていませんでしたが、それでも150キロは出していますし、三振もたくさんとれています(当時、東京六大学リーグ歴代9位の通算323奪三振)。だったらプロでパワーピッチャーを目指してもいいだろうと思っていたんです。

 でも、そんなことを小耳にはさんだのか、ファイターズの山田(正雄)GMが「佑ちゃんのいいところは、いつでも変化球でストライクがとれるところなんだから」と言うんです。そう言われて、そうかもと思ってしまいました(苦笑)。パワーピッチャーへの憧れを捨てられないのに、初球から変化球で簡単にストライクをとって、2球目も変化球で追い込んで、3球続けての変化球で三振、なんていうのも僕にはアリなんじゃないかと......ストレートで押しまくるだけがパワーピッチャーじゃないし、松坂(大輔)さんみたいに力強い変化球を自在に操れれば、それもパワーピッチャーなんじゃないかとか、そんなことを考えていました。

【苦労させられたOBたちの助言】

 そもそもプロ1年目のキャンプには、いろんなOBの方がいらして、いろんなことをアドバイスしてくれます。でも、みなさん、それぞれ違うことを言うんです。

 ざっくりと例を挙げれば、「ストレートを投げ込んでおけ」と言う人もいれば「変化球を磨け」と言う人もいる。フォームにしても「右ひざは曲げたまま投げたほうが、股関節が使えるからいい」と言う人がいるかと思えば「右ひざは真っすぐ伸ばすのが基本」と言う人もいる。「踏み出した左足のヒザは突っ張ったほうがいい」と言う人もいれば、「絶対に突っ張っちゃいけない」と言う人もいる。

 ホント、バラバラなんです。そこには苦労させられた記憶があります。だから僕は吉井さんを頼りにしていました。迷った時は吉井さんの言うことを聞くようにしていたんです。吉井さんは「佑ちゃんが真っすぐを投げたいんだったら、真っすぐで勝負すればいい」と言ってくれて......実際、最初の実戦登板となった韓国のチームとの練習試合では、「今日は全部まっすぐでいこうや」ということになりましたからね。僕は思わず「ホントですか?」と聞き返してしまいました。

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