小林至が語るプロ野球発展のために必要なこと「日本版MLB.comの確立は急務だ!」 (3ページ目)

  • 飯尾哲司●文 text by Iio Tetsuji
  • photo by Sankei Visual

【NPBが本来やるべきこと】

── 小林さんは、2007年創設の共同出資会社「パシフィックリーグマーケティング(PLM)」の初代執行役員を務めたのですよね。

小林 はい。2004年の球界再編騒動を経て、パ・リーグ各球団にはインターネットに明るいビジネスマンが多数、球界に参入しました。現ヤフー社長の小澤隆生氏、ビズリーチ起業者の南壮一郎氏らがそうです。PLMではパ・リーグ6球団の映像を一括管理し、各球団のウェブサイトも一元化しました。映像をPLMでいつでも取り出せるようになっています。実際、昨年の佐々木朗希投手(ロッテ)の完全試合の映像を、パ・リーグ6球団公式のサービスとして限定販売しています。
 
 孫正義氏も「日本版MLB.comを絶対つくるべきだ」と言っていました。しかし12球団統括となると......依然、進んでいないのが実情です。当然、セ・リーグ6球団のサイトの一元化もなっていません。

 だからソフトバンクの「シーズンハイライト」の映像もつくれません。なぜなら2005年から始まった「セ・パ交流戦」にはセ・リーグ球団のホームゲームがあるからです。ましてや73回の歴史を誇る「日本シリーズハイライト」もつくれない、見られないのです。メジャーは各チームの「シーズンハイライト」であったり、「ワールドシリーズハイライト」であったり、魅力的なコンテンツが充実しています。

── 小林さんの近著『野球の経済学』(新星出版社)にも「プロスポーツは権利ビジネスだ」という趣旨の内容が書かれています。現状、日本シリーズの「映像や写真」はマスコミが持っていますが、日本シリーズにおける「肖像権」自体はNPBが持っているという二重構造ですね。

小林 これだけさまざまなエンターテインメントがひしめくなかで、プロ野球がこれまでと同様に国民から支持してもらうためには、あらゆる「機会」をとらえて、自らが「発信」していかなくてはならないと思います。たとえば日本シリーズのテレビ中継で「サヨナラの場面」を迎えた場合、過去のサヨナラ本塁打の名シーンを挿入するとか、素材はいくらでも使いようがあるわけです。ワールドシリーズを見ていると、いくらでもそんな過去の映像が出てきます。そこが日米の大きな違いです。

 プロ野球としての大事な財産とヒーローの活躍をライブでしか楽しめないのが現状です。日本プロ野球界にとってどれだけ大きな損失でしょう。過去の「記録と映像」の権利の充実──ビジネスという以上に、日本シリーズの「記録と映像」の使用権に、日本プロ野球界の懸案が凝縮されているのではないでしょうか。

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