小林至が語るプロ野球発展のために必要なこと「日本版MLB.comの確立は急務だ!」 (2ページ目)

  • 飯尾哲司●文 text by Iio Tetsuji
  • photo by Sankei Visual

【これからのプロ野球に必要なこと】

── かつてプロ野球界をはじめとするスポーツ界には、「スポーツでお金を儲けるなんて......」という風潮がありました。それが2004年の球界再編騒動以後、プロ野球のビジネス化がスタートしました。

小林 たとえば2019年の話で言うと、NPBの売り上げは12球団で年間1800億円だったのに対し、MLBは30球団で100億ドル(約1兆4000億円)以上です。NPBは球団と親会社、試合を放映するテレビ局などの権利が複雑で、12球団を一括してのビジネス化が一向に進んでいません。

 私はかつてNPBで事業会社化検討プロジェクトの座長を務め、12球団での共同事業会社の設立を提案しました。その後、NPBエンタープライズというハコができて、侍ジャパンの常設化まではできましたが、肝心の12球団の権利の集約はまだ進んでいません。

── 今後、日本プロ野球界において、具体的にはどんなことが必要なのでしょうか?

小林 たとえば、日本プロ野球89年の歴史と伝統である「記録と映像」をアーカイブ(保存記録、公文書)化して、閲覧できるような形をつくることが大事だと思います。わかりやすい例を挙げれば、「村上宗隆(ヤクルト)選手の全本塁打集」(プロ5年間通算160本塁打)を、合法的に視聴できるようになっていない。神宮球場を中心としたヤクルトのホームゲームでの村上選手の本塁打映像はありますが、ビジターでの映像はまとめてありません。

 ビジネスとしてももちろんですが、それ以上にファンの誰もが見たいと思うのです。近い将来、ポスティングシステムでメジャー移籍するかもしれませんが、日本プロ野球界として、村上が打った全本塁打の記録と映像を残すべきだと思うのです。それ以前に、同様の理由で王貞治さんの通算868本塁打も集約されていないのです。

 ちなみに、メジャーリーグには「MLB.com」があります。そこでは、すべての映像がデジタル化され、管理されています。権利関係が整理されていない時代の映像や画像は、テレビ局や新聞社などから買い取りました。1920年代のベーブ・ルースの本塁打の映像も見られます。日本でもパ・リーグ6球団の映像なら、ここ10数年のものがすべて管理されています。

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