侍ジャパンのブルペン捕手・鶴岡慎也が強烈な印象だった投手2人「構えたミットに吸い込まれる」「下から突き上げてくる」

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Getty Images

WBC日本代表ブルペン捕手・鶴岡慎也インタビュー(後編)

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の1次ラウンドを無傷の4連勝で突破した日本代表。準々決勝でもイタリアに快勝し、これまで2大会連続で敗れている鬼門の"準決勝"へと駒を進めた。悲願の世界一へ向け、日本代表は想像をはるかに超えた戦いを演じることになる。日本代表のブルペン捕手を務めた鶴岡慎也氏に準々決勝以降の激闘を振り返ってもらった。

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WBC決勝のアメリカ戦で先発した今永昇太WBC決勝のアメリカ戦で先発した今永昇太この記事に関連する写真を見る

【伊藤大海のマウンド度胸】

── 1次ラウンドを終え、日本代表のなかでとくに印象深い投手は誰ですか。

鶴岡 山本由伸投手(オリックス)、佐々木朗希投手(ロッテ)は、ストレートの速さとキレ、フォークの鋭さなど、噂に違わぬすごさを感じました。今季も15勝から20勝近くはするだろうなと。間違いなく、今後の日本球界を背負う投手であることを実感しました。

 ただ、私が個人的に印象深かったのは今永昇太投手(DeNA)です。ストレートの速さ、コントロールのよさが秀逸でした。構えたミットに吸い込まれるように収まる。自分の投げたいコースと球種を、たとえば「内角いきます」「(変化球で)ワンバウンドでいきます」と、本人の言ったとおりに決めてくる。それを淡々と何球も投げ続けられるのです。

 じつは昨年、今永投手がノーヒット・ノーランを達成した試合(札幌ドーム)で、私は解説を務めていました。その瞬間も感情をあらわにするのではなく、ポーカーフェイスでした。"投げる哲学者"の異名を持つそうですが、メンタルの強さ、気遣いもできる人格者であることを、実際に接してみて感じました。

── ほかに印象に残った投手はいましたか。

鶴岡 みんな超一流の投手ですが、選ぶとしたら大勢投手(巨人)ですね。準々決勝のイタリア戦の9回、準決勝のメキシコ戦の9回、決勝のアメリカ戦ではダルビッシュ投手、大谷投手の前の7回を任されるなど、実質的にジャパンのクローザー的存在でした。

 サイドスローより少し上から投じる独特のフォームから155キロを超すストレートはエグかったですね。私は現役引退から1年経ちますが、捕るのがやっとという感じでした。シュート回転すると、ふつう球威は落ちるのですが、大勢投手のボールは逆に強さが増してくるイメージ。伸びがあるとか、速いというよりも、「下から突き上げてくる」という表現がふさわしい衝撃的な球でした。

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