第1回WBCメンバー・清水直行が振り返る初優勝。福留孝介の韓国戦ホームラン、イチローに「そんなことするの?」と思った選手も語った (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by Sankei Visual

【福留の起死回生ホームランに大はしゃぎ】

――試合は0-0で進みましたが、7回表に代打の福留孝介さん(元中日、カブスなど)が先制の2ランを放ちます。不調だった福留さんの起死回生の一打に、日本の野球ファンは大興奮しました。

清水 僕らもファンと同じように大盛り上がりでしたよ(笑)。一塁側のブルペンで、ちょうどライトのライン際あたりにいたのですが、打球がスタンドに入った瞬間、ブルペンにいたメンバーは喜びを爆発させていました。クローザーの大塚(晶文)さん(元近鉄、パドレスなど)はブルペンでスタンバイしていましたけど、僕を含めて出番がなさそうな選手たちは大はしゃぎしていました。

 僕はアメリカ戦で打たれてしまったので(2番手で登板するも、デレク・リーに同点2ランを被弾)、「もう出番はほとんど回ってこないだろう」となんとなく感じていました。だから応援でチームを支えようと思い、馬原(孝浩・元ソフトバンクなど)たちと一緒に「みんなで応援するぞ!」とめちゃめちゃ声を出していましたね。ベンチまで届いていたかどうかはわかりませんが(笑)。

――大事な試合で投げられなかったことに、悔しい思いもあった?

清水 僕が投げたのは、第1次ラウンドの中国戦と第2次ラウンドのアメリカ戦。あれだけのスター選手が集まっているなかで、みんなが自分が投げたいところで投げられるわけではありません。"ダブル先発"といわれるような役割があって、僕は上原が先発する試合の2番手という役割でした。

 アメリカ戦で打たれたあとに出番が回ってこなかったことなど、もちろん個人的な悔しさもありましたが、それでも試合はチームとして戦うもの。声を出したり、ブルペンの雰囲気を盛り上げたりといったことを率先してやるようにしました。いかに献身的になれるかは、すごく必要なことだと思うんです。

――チームの雰囲気と言えば、第1回大会ではイチローさん(元マリナーズほか/現シアトル・マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)の存在が大きかったと思いますが、いかがでしたか?

清水 イチローさんはとても心強い存在でしたし、みんなが助けられていたと思います。高校時代(愛工大名電)にピッチャーだったこともあってか、ピッチャーのことも本当に「見守ってくれている」と感じました。

 円陣を組んでいる時、言葉数は少ないのですが、気合いを入れてくれたこともあります。「どういう気持ちで自分たちは日の丸を背負うべきなのか」「日本の野球界を代表して戦うんだ。日本野球をなめられてたまるか」といった強い気持ちが伝わってきました。単なる勝ち負けではなく、ひとつの勝ち、ひとつの負けが日本野球の未来に関わるという感覚というか、1、2段階上の感覚で野球をしているんだと感じましたね。

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