ヤクルトで長岡秀樹、内山壮真に続く期待の有望株。高卒2年目の小森航大郎は泥臭さとパンチ力で一軍を狙う
村上宗隆、長岡秀樹、内山壮真......。近年のヤクルトは、高校を卒業して間もない野手の成長が著しい。そして今シーズンも、楽しみな逸材が虎視眈々と一軍の座を狙っている。
ヤクルト二軍の戸田球場のバックネット裏スタンドに立つと、正面にメイン球場、道を隔てた右手にはサブグラウンドと陸上競技場を見渡すことができる。その3カ所で息を弾ませて走り回る選手がいれば、それは小森航大郎である。
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【入団早々に味わったプロの洗礼】
小森は右投右打の遊撃手で、宇部工高(山口)から2021年ドラフト4位でヤクルトに入団。3年夏の山口大会では3回戦で敗れるも、11打数10安打の活躍。身長172センチと小柄ながら、高校通算26本塁打のパンチ力と50メートル5秒90のスピードが評価された。
昨年の戸田取材は、この新人遊撃手が朝一番に球場に来て、メイン球場で使うネットを運び入れる作業を見ることから始まった。この時点では笑顔が弾け、ユニフォームも真っ白だが、練習が進むにつれ苦悶の表情を浮かべ、真っ黒になっていくのである。
たとえば、試合前練習が終わり休憩時間の間に、土橋勝征育成チーフコーチと小森のマンツーマン守備練習がサブグラウンドで行なわれることがある。
「なんだよ、曇ってるのにもう疲れてるよ(笑)。足が前に出てない。朝はまずランニングしろ、ランニングを! よし、あと5本。疲れた顔をしたら増えていくからな」(土橋コーチ)
ノックが終わると、小森はトンボでグラウンド整備をするのだが、土にまみれたユニフォーム姿と、楽しいのかバテているのか、判別のつかない表情がいつも印象に残った。
ユニフォームがいつも真っ黒になる理由について、「自分はいちばん下手くそなんで」と説明したが、プロ入り前はすぐに一軍で活躍できるという思い上がりがあったという。
「プロを舐めたクソガキだったんですけど、先輩たちは打撃練習で簡単にスタンドに入れたり、ミスをしないことだったり、日を重ねるごとにレベルの違いを感じさせられました。
ピッチャーの投げるボールもそうです。これまで見たことのないスライダーやフォークで、すぐに手が出てしまう。これは打てないと思いました。そういう世界で、下手くそな人間が誰よりも一生懸命やらないでどうするのかという思いです」
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