ヤクルトで長岡秀樹、内山壮真に続く期待の有望株。高卒2年目の小森航大郎は泥臭さとパンチ力で一軍を狙う (4ページ目)

  • 島村誠也●文・写真 text & photo by Shimamura Seiya

【トリプルスリーを狙える選手に】

 杉村繁打撃コーチは、2週間の松山キャンプで小森に「まずは一軍の練習はこういうものだよ」と、基礎中の基礎を教えたと話した。

「バッティングはまだまだ一軍にほど遠いですが、元気もあるし、のびのびしている。いろいろと質問してくる前向きさもある。チームには山田(哲人)や村上(宗隆)といった高校から入ってきて、日本代表になった選手がいます。いい手本が身近にいるので、それを見て少しでも近づいてほしいですね。その手伝いができればと思っています」

 高津監督は、松山キャンプで初めて見ることになった小森の印象についてこう述べた。

「ロングティーを見ていても、しっかりバットを振れるというのが大きな特徴だと思います。当たるか当たらないか、確率の悪い時もありますけど、バッターとしてすごく大事な部分なのかなと」

 小森は、昨年最後の実戦となった松山フェニックス戦(社会人)で途中出場し、ヒットと四球で全打席出塁。2023年シーズンに向けていいアピールになった。

 今シーズンについては、「ちょっとでも早く一軍に上がって、『小森をドラフトで指名してよかったな』と思ってもらえるようになりたい」と語った。

「自分は本当に下手くそなんで、ケガをせずにうまくなって、謙虚に泥臭くやっていきたいです。杉村コーチからは、山田哲人さんや自分が憧れている選手は試合に入る前にしっかり準備をされているということを教えてもらいました。自分も準備を怠らず、いつの日か"トリプルスリー"を狙えるような選手になりたいという思いがあります。そのためにも自分は身長がない選手なので、誰よりも考えてやっていきたいです」

 高津監督は、今後の若手選手たちの育成方針についてこう話している。

「一軍で育成することもあれば、二軍の首脳陣に任せて育成することもあると思います。先を見据えた時に、いろいろな方法で若い選手を育成させていくスタイルは変えないでいこうと思います」

 高津監督は「若手の底上げと競争」を強く打ち出している。まずは2月の春季キャンプで、小森は泥だらけとなったユニフォーム姿でアピールしているに違いない。

【著者プロフィール】島村誠也(しまむら・せいや)

1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。

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