広岡達朗が語る日本野球のすばらしさと日米指導者論「コーチがベビーシッターになってどうする!」

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Sankei Visual

 2023年3月に第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が6年ぶりに開催される。今回、栗山英樹監督率いる侍ジャパンに、現役メジャーリーガーの大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、鈴木誠也(カブス)が参戦。史上最強の侍ジャパンが3度目の栄冠をつかみとれるかに注目が集まっている。

 ただWBCは、およそ1世紀にわたる歴史を持つ世界最大のスポーツの祭典・サッカーW杯と違い、2006年に第1回大会を開催したばかり。また招待制の大会として開催しているため、予選を含めて参加国は28カ国のみ。規模はサッカーW杯とは比較にならない。

 日本はWBCで第1回、第2回大会で優勝を手にしているが、だからといって日本の野球がメジャーよりも上だとは誰も思っていないはずだ。やはり、野球をする者にとってメジャーは今でも世界最高峰の舞台である。

 球界のご意見番であり、1966年に現役引退後、すぐに自費でアメリカ留学したメジャー通でもある広岡達朗が、日本とメジャーとの違いについて懇々と語ってくれた。

コーチと選手とのマンツーマン指導は日本ではよく見かける光景だが(写真はイメージ)コーチと選手とのマンツーマン指導は日本ではよく見かける光景だが(写真はイメージ)この記事に関連する写真を見る

【日米のシステムの違い】

「WBCはMLB機構が選手会とともに立ち上げた世界戦略のための大会だったが、本気で勝とうという国は少なかった。アメリカにいたっては一流半の選手を出すだけで、シーズン前の大事な時期に選手を出すのは簡単なことじゃない。

 ただMLBは海外戦略に熱心で、2019年にロンドンシリーズ(ヤンキース対レッドソックス)を開催し、2023年もやることを決めた。WBCを運営管理することで海外のいい人材を確保しようと考えているのだろう」

 そして広岡は、日本とアメリカのシステムの違いについて語った。

「日本人は世界を知らなすぎる。今は中南米が主役になっているけど、オレがお世話になった頃のメジャーと比べたらレベルが落ちている。当時は、黒人で初めてメジャーリーガーになったジャッキー・ロビンソンがまだ現役バリバリだったからな。かつて黒人系の選手の生家に行ったことがあるが、想像を絶するくらい貧しかった。当然、中南米の選手のなかにもそういうところで育ち、アメリカに来た選手はいくらでもいるだろう。ハングリー精神の塊だよ。

 日本とアメリカの一番の違いは、順序を踏んでやるシステムかどうか。アメリカでは、マイナーで答えを出した選手がメジャーになる。だから、日本で成績がいいからといって、なんですぐにメジャーでプレーできるのか? おかしいだろ」

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