現役打撃投手、元巨人外野手、甲子園準優勝投手...トライアウトのマウンドに紆余曲折を経てたどり着いた3人の男たち (3ページ目)
村上が入団した2021年からシュライクスはリーグ連覇を果たす。村上はクローザーを任され、今年はチーム最多の4セーブを挙げる活躍を見せた。
本当は昨年のトライアウトにも参加するつもりでいたが、調子がなかなか上がってこなかった。割り切って2022年のトライアウトに照準を定め、そして今年、ついにトライアウトのマウンドに立った。
パワーで押す投球で、山﨑真彰(元楽天)をセカンドフライ、岩見雅紀(元楽天)、上野響平(元日本ハム)をともに140キロ台の球で空振り三振に斬ってとった。
「最高のパフォーマンスとは言えないですけど、実力は出せたのかな」
初めてNPB戦士に対峙したマウンドを、村上は謙虚に振り返った。
「野手の時も野球は好きでしたけど、シュライクスでピッチャーをやるようになって、より野球が好きになりました」
野球をやったことがある人間なら、誰しもが一度は憧れるポジション。ピッチャーへの情熱を捨てなかったからこそ立てた、トライアウトのマウンドだった。
東海大相模時代は夏の甲子園準優勝を果たした一二三慎太この記事に関連する写真を見る
30歳になった甲子園準優勝投手
タテジマの背番号36がマウンドに上がると、スタンドから拍手が起きた。球界を去って6年が経ってもファンがその男を忘れていないのは、珍しい名前のせいだけではないだろう。
一二三慎太──サイドスローから150キロの剛球を投げ込む東海大相模のエースとして、2010年に夏の甲子園準優勝。将来を嘱望された逸材として、同年秋のドラフトで阪神から2位指名を受けたが、その時点で一二三の肩は悲鳴を上げ始めていた。
ルーキーイヤーから満足に投げられない日が続き、2年目の2012年には早くも野手に転向。だが、その後も類まれなセンスを発揮する機会は訪れず、2015年に育成契約となり、翌年に阪神から戦力外通告を受けた。
現在はパーソナルトレーナーとして働いている一二三が、トライアウトを決意したのは「再び投げる姿を見せたい」という強い思いからだった。
「トレーナーをやっていると、『肩が痛くて投げられへんけど、どっかで投げられへんかな』っていうお客さんが多いんで、僕が手本を見せようと。周りに支えてくれる人がいたので、やっぱり僕も表舞台に出て、そういう姿を見せたかった」
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