現役打撃投手、元巨人外野手、甲子園準優勝投手...トライアウトのマウンドに紆余曲折を経てたどり着いた3人の男たち (2ページ目)

  • 杉田純●文 text by Sugita Jun
  • photo by Murakami Shogo

 2022年になってから本格的にトライアウトに向けて動き出し、バッティング投手の傍ら、朝や昼の空き時間を使って練習を重ねた。

 迎えたトライアウト本番、小石は現役時代の西武のユニホームではなく、巨人の背番号209のユニホームでマウンドに上がった。

 対戦相手は、阪神で中軸を務めたこともある中谷将太(元ソフトバンク)、広島の優勝メンバーである安部友裕、18年に2ケタ本塁打を放った内田靖人(元楽天)と、一軍でも実績のあるメンバーが揃う。

 内田にはレフト線への二塁打を許したものの、中谷は空振り三振、安部はサードゴロに仕留めて出番を終えた。

 取材でこの日のベストピッチングを問われた小石は、迷わず「空振りをとれたスクリュー」と答えた。現役時代の8年間にバッティング投手としての3年間を加えた11年の蓄積を、3000人のファンに披露できた瞬間だった。

トライアウト最速となる150キロを出した巨人の元外野手・村上海斗トライアウト最速となる150キロを出した巨人の元外野手・村上海斗この記事に関連する写真を見る

元巨人外野手が投手として挑戦

 今年のトライアウトには、計26人の投手が参加していた。本格派から技巧派、変則投げまでバラエティーに富んだ投手が集まるなか、この日、最速となる150キロを計測したのは、緑色のユニホームに身を包んだ大柄な右腕だった。

「真っすぐとスライダーとフォークしか投げていません。とにかく、真っすぐをアピールしたかったんで」

 そう語るのは村上海斗。元巨人の"外野手"である。


 高校時代からピッチャーを務め、大学で野手転向してからも、ピッチャーをやりたい気持ちは消えなかった。

「大学で肩の調子が悪くなって、1年間投げられなくなったんですよ。野手としても評価してもらえていたので、『野手一本でどうだ』と監督に言われて転向したんですけど、バッターでは自信なんか全然なかったですね」

 2017年のドラフトで巨人から7巡目指名を受け入団するも、一軍に出場することなく、2020年オフに戦力外通告を受ける。だが、それが転機となった。

 関西独立リーグの堺シュライクスに身を置き、投手に復帰。肩の故障はすっかり癒え、問題なく投げられるようになった。

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