オリックス・中川圭太は「我慢こそが成功につながる道」で無敵の存在に。才能を信じ続けた指揮官との絆 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 カウント2−2となった5球目。ホークスの守護神、モイネロが投じたインコースへのスライダーを中川は三遊間へ弾き返した。握った拳を高々と突き上げるヒーローを、喜びを爆発させたチームメイトが追いかける。ホークスを倒すサヨナラヒット、そして日本シリーズへ......その瞬間、中川はいったい何を見ていたのだろう。

「いやぁ、興奮しすぎて(笑)、あんまり覚えていないんですけど、でも走っていく先に(2塁ランナーだった)宗(佑磨)が手を広げて待っていてくれていたので、飛びつきました。その光景は覚えています。うれしかったなぁ......覚えているのはそれだけなんですよね」

 昨年、オリックスとしては25年ぶり(近鉄を含めれば20年ぶり)のリーグ優勝を果たしたバファローズだったが、それまでケガに泣かされた中川は蚊帳の外に置かれ、忸怩(じくじ)たる思いを抱えていた。まだほんの1年前の、今頃のことだ。

「僕、去年の日本シリーズはまったく見ていないんです。悔しい思いはもちろんありましたが、自分が出ていない試合をわざわざ、そういう気持ちのなかで見るのはどうなんだろうと思ったからです。試合を見るよりもっとほかにやることがあるんじゃないかと思って、バッティングやトレーニングを見直そうと思いました。

 だから、ちょうど去年のこのくらいの時期からファームのトレーナーさんと一緒に下半身を中心としたウエイトトレーニングを始めたんです。それは身体を大きくするとかではなく、瞬発的な出力を上げるトレーニングで、それを1年間、続けてきました。うまくいかない時こそ、今は我慢だと自分に言い聞かせてきましたから......我慢してやり続ければなんとかなるし、我慢こそが成功につながる道。そういう考え方は自分に合っていると思いますし、だからひたすらやり続けることが大事だなと思っています」

「無敵の中川」が苦手なもの

 そんな甲斐あって、今年の中川は規定打席をクリアする。打率.283はリーグ5位、ホームランは8本、打点51。なかでも特筆すべき数字がある。それがスリーベースヒット──"三塁打9本"はリーグトップだ。

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