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CS突破のキーマン、ソフトバンク松本裕樹の新球「サイドスピンチェンジ」はいかにして完成したのか (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 マルティネスに着想を得た松本は、まさに同様のアプローチを行なった。高島トレーナーのジムで一緒に自主トレを行なうメンバーのひとり、アメリカの独立リーグでプレーする右腕の赤沼淳平が持ち球としているサイドスピンチェンジを参考にしたのだ。

 幸いだったのは、松本と赤沼はともに腕を振る位置がスリークォーターよりやや低いという点で似ていたことだった。

 最初は赤沼が投げるサイドスピンチェンジを見てイメージを膨らませ、松本も投げてみる。それをラプソードで計測し、ラプソードインサイトというハイスピードカメラでリリース時の指先の使い方を確認する。計測された腕の角度や回転数を踏まえ、微修正して再び投げる。

 自主トレにはオリックスの杉本や楽天の太田光など打者も参加しているから、打席で軌道を見てもらった。

 そうしてマルティネスに着想を得たチェンジアップは、松本の武器のひとつになったのだ(ピッチデザインの詳細を知りたい人は高島トレーナーの新刊『革新的投球パフォーマンス ピッチデザイン』に具体的に解説されている)。

CSのキーマンになる

 高校時代から才能を高く評価されて2014年ドラフト1位でソフトバンクに入団した松本だが、ヒジや腰の故障に悩まされ、一軍でコンスタントに活躍するようになったのは2年ほど前からだ。2020年オフにヘルニアの手術を受け、身体的な大きな不安が解消され、高島トレーナーとともに変化球の幅を増やそうと取り組み始めた。同氏が解説する。

「ストレートやスライダーなど、基本的に外角の使い方がうまい投手です。でも右打者に踏み込んでこられたり、見切られたりしてしまうので、内角に落とせるボールがあると踏み込みづらくなる。フォークのように明らかに落ちる球種とはボールの回転の仕方が違うので、バッターは軌道を見て『え? ストレート?』となります。サイドスピンチェンジのような軌道のボールは日本ではまだほとんどないので、バッターとすれば見極めにくい。『使い勝手のいいボールになるよね』という話で始まりました」

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