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元NPB審判員・杉永政信が選ぶ「球種別・最強投手」。落合博満が腰を抜かし、古田敦也が絶叫したカーブの使い手は? (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

97年に15勝を挙げた田畑一也97年に15勝を挙げた田畑一也この記事に関連する写真を見る

カーブ/田畑一也(ダイエー、ヤクルト、近鉄、巨人)

 カーブなら、100勝100セーブをマークした広島の佐々岡真司投手が先発時代に投げていたタテにドロンと曲がる落差の大きい、俗に言う「ドロップ」が印象的です。巨人の桑田真澄投手のカーブも軌道が似ていて、打者を翻弄していました。

 ただ私が最も印象深いのは、ヤクルト時代の田畑一也投手のカーブです。なぜかというと、田畑投手がダイエーからヤクルトに移籍してきて、初めての巨人戦での登板でこんなことがあったからです。

 バッターは落合博満選手で、田畑投手のカーブが頭に当たると思ってもんどりうって避けたんです。引退後、落合選手は「死球を避けるために(神主打法と呼ばれた)あの打撃フォームになった」とインタビューで答えていました。三冠王を3度も獲得したわりに、通算死球数が63個と少ないのは、ボールへの反応が素早く、避け方もうまかったからです。

 その落合選手があれだけ避けたということは、「当たる」と判断したからでしょう。それほど田畑投手のカーブは曲がり幅も落差も大きかったわけです。当然、私は「ストライク!」とコールしました。その瞬間、捕手の古田敦也選手が「このカーブ、使えるぞ!」と興奮気味に声を上げていました。

 ダイエーの4年間で2勝しかできなかったドラフト10位の田畑投手が、1996年に12勝、97年に15勝と大飛躍を遂げました。あの落合選手がカーブにもんどりうったことは、田畑投手にとって意義深いワンシーンだったと思います。

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