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元NPB審判員・杉永政信が選ぶ「球種別・最強投手」。落合博満が腰を抜かし、古田敦也が絶叫したカーブの使い手は? (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

シンカー/山本昌(中日)

 シンカーとは投手の利き腕の方向に曲がりながら落ちる球種で、左投手の投げるシンカーは「スクリューボール」と呼ばれることもあります。私がジャッジしたなかで、シンカーといえば山本昌投手です。

 山本昌投手がプロ5年目の1988年、アメリカ留学していた時にシンカーを覚えたと言います。帰国後、ウエスタンリーグで投げた時にそのシンカーを見て「なんだ、この球は?」と思った記憶が、今でも鮮明に残っています。

 シュートしながらふわりと落ち、左打者ならインコースの膝もとに決まり、右打者ならアウトコース低めに逃げていく。山本昌投手の決め球はもともとスライダーでしたが、このシンカーを覚えたことによって投球の幅が一気に広がりました。

 この年、シーズン途中で一軍に上がり、5勝を挙げて中日のリーグ優勝に貢献。その後も最多勝のタイトルを3度獲得して中日のエースに君臨。とはいえ、当時は200勝投手になるとは思ってもみませんでした。

148キロのフォークは当たらない

フォーク/山本由伸(オリックス)

 打者というのはボールがリリースされた瞬間、スイングするのか、しないのかを判断をしなければなりません。ストレートとフォークの腕の振りは同じで、打者はその判断に苦しみます。ただ球審はバッテリーの後ろからボールを見るので、軌道はわかるんです。だから「ボール球になるフォークをなぜプロの打者が振るのだろう?」とよく思っていました。

 しかし山本投手のフォークは、球審から見ても限りなくストレートに見えて、そこから落ちる。しかも落差が30センチほどもあって、球速もある。山本投手のストレートは155キロ超で、フォークは148キロぐらい。「こんな球、当たらないよ」というすごいレベルです。

 フォークといえば、"大魔神"佐々木主浩投手も忘れられません。佐々木投手のフォークは空振りをとるために低めにきてワンバウンドするのですが、山本投手はストライクを稼ぐために高めから落ちてくる。だから、落ち幅が大きいように感じるのかもしれないですね。

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