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絶望、軍隊、地獄...日本一厳しいと評される亜細亜大野球部が挑む「合理的な根性論」の実体 (5ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sportiva

 実際、データと感覚には相関性があると大出は感じている。

「このレベルになると、みんな自分の感覚を言葉にできるのですごいと思います。逆に自分が見て『いいボールですね』って監督さんに話したら、『いや、今のはちょっとシュートしているよ』と言われ、ラプソードで見直すと実際にそうだったこともありました。そうやって感覚と擦り合わせながら、データの使いどころも少しずつわかってきたりします」

 データと感覚は、相反するものではない。むしろ補完し合うものだ。亜細亜はそう気づき、フル活用している。

「たしかに亜細亜は厳しいけど、すごく合理的にやっています」

 高1で生田監督と出会った頃、チームも指揮官の名前も知らなかった大出はそう話した。毎朝5時台に起きて選手たちと一緒に戦うなか、次々と飛躍していく背景を実感している。

 合理的な根性論──。

 山﨑康晃(DeNA)や東浜巨(ソフトバンク)、九里亜蓮、薮田和樹(ともに広島)、高橋遥人(阪神)ら好投手を次々とプロに送り出してきた亜細亜にはそうした土壌がある。そこから今年のドラフト候補に成長した投手が、最速150キロ右腕の青山美夏人と、大学3年のトミー・ジョン手術から今年復帰した145キロ左腕の松本晴だ。

「松本晴は高橋遥人よりいいボールを放ります。間違いないです。だけど、ケガが多いんです」

 指揮官も太鼓判を押す逸材は、なぜヒジにメスを入れるに至ったのか。その過程をたどると、投手育成の難しさをつくづく感じさせられる。

一部敬称略

第12回につづく

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