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絶望、軍隊、地獄...日本一厳しいと評される亜細亜大野球部が挑む「合理的な根性論」の実体 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Sportiva

 名門・常総学院で初めて男子マネジャーを務めた大出と、「機械は苦手」と言う生田監督の最初の"共通言語"はテクニカルピッチだった。ボールにセンサーが内蔵され、球速や回転数、回転軸などを計測できる器具だ。

 2018年から大学日本代表を率いた生田監督は、筑波大学の准教授で動作解析の第一人者でもある川村卓監督に協力を仰ぎ、テクニカルピッチを選考に活用した。

「陸上(競技)には公認記録や何秒以内という選考基準がありますよね。野球も球速145キロ以上とか回転数、ヘッドスピード、塁間のタイムとか細かい基準がないと、『なんでこの選手を全日本に選んだの?』と言われた時に答えようがないんです。

 僕らは経験があるからブルペンやバッターボックスで見て、『球がビュッて来ていた』とか『横から見たらボックスの中で差されていた』とわかります。でも表現が曖昧というか、個人によって違いますよね。数字で残すにはそういう道具がないとわからないので、テクニカルピッチを試しました」

 当時の大学日本代表には甲斐野央(現・ソフトバンク)という球速150キロ台を連発する剛腕投手がいた。それを差し置き、スピードで劣る伊藤大海(現・日本ハム)を守護神に抜擢したのは根拠があった。

 9回、僅差のリードで絶対に逃げきらなければいけないような場面では、三振奪取力が求められる。走者のある場面でゴロを打たれると、エラーの可能性が生じるからだ。甲斐野より伊藤のほうが奪三振に優れるため、生田監督はコーチと話し合ってふたりの役割を決めた。

「以前は『球が速いから』『体が大きいから』という理由で選ばれていました。でも僕は発想が違って、ゴロではなく空振りをとれるピッチャーを抑えにした。『なぜ』かと言うと、川村先生が『ホップ率が高く、空振りをとれる』という理論を説明してくれたからです」

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