館山昌平「俺はケガがなかったら...と言い訳する人をたくさん見てきた」。現代の投手育成法とケガの予防を考える (4ページ目)
ヒジの靭帯が伸びきって投げられなくなった投手を高確率で復帰させる点で"最後の希望"とも言えるが、マウンドに戻るには1年近くを要し、経験者からは「感覚が変わる」という声も聞こえる。日本で権威として知られる慶友整形外科の古島弘三医師と岡山大学整形外科の島村安則医師は、「受けないに越したことはない」と口を揃えた。
自分の体に合った投球動作
そこで大事になるのは、ピッチングという動作への理解と故障予防だ。両者はつながっているもので、館山はこう説明する。
「故障予防は、まずは自分の"カタチ"を知ること。自分が本来持っている骨格から、どんなフォームが合っているか。回転効率やボールが指にかかる重さを理解したうえで、自分にとって100点のフォームに近づけていく。真横から投げるシンカー気味のボールでも、自分の体に合った投げ方から100%の力を出していれば、その選手にとって合った投げ方ということです」
ピッチングは本来、極めて難度が高い動作だ。昭和生まれの日本人男性なら誰しもボールを上から投げられるが、野球離れが進む昨今、子どもたちに投球を教えるのに苦労するコーチが多くいるという。筆者は英国で暮らしている頃、ボールを上からうまく投げられない青年を多く目にした。野球に馴染みが薄い者にとって、ピッチングは難しい行為なのだ。
オリックスの山岡泰輔らと個人契約する高島誠トレーナーによると、投球動作に重要な要素は「筋量」「筋出力」「身体操作性」「柔軟性」に因数分解できるという。これらがバランスよく、高レベルで融合された結果、自然と"いいフォーム"に近づいていく。くわえて、左右の手足でどちらが使いやすいかは人それぞれで、自分に合った投げ方を身につけることが重要と高島トレーナーは言う。
以上のような投球動作への理解や、それとも関連するトレーニングの進化、さらにテクノロジーの恩恵もあり、近年、プロ投手の平均球速は上がり続けている。高校野球でも150キロを計測する投手は珍しくなくなった。
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