館山昌平「俺はケガがなかったら...と言い訳する人をたくさん見てきた」。現代の投手育成法とケガの予防を考える

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

【短期連載】令和の投手育成論 第1回

 プロ野球のオープン戦もいよいよ本格化し、3月25日の開幕へ着々と準備が進められている。そのプロ野球から1週間早く熱戦をスタートさせるのが、高校野球のセンバツ大会だ。

 球界では新しいシーズンが始まるたびにニュースターが誕生し、同時にキャリアを終える選手もいる。2021年を振り返ると、NPBでは6人が任意引退選手となった。つまり自らの意思でユニフォームを脱いだわけだ。そのなかで、とくに大きな注目を集めたのが"平成の怪物"こと松坂大輔だった。

昨年10月、23年の現役生活にピリオドを打った松坂大輔昨年10月、23年の現役生活にピリオドを打った松坂大輔この記事に関連する写真を見る

松坂大輔の引退試合に思う

 横浜高校時代に甲子園を沸かせた松坂は、高卒1年目からプロ野球を席巻。WBCでは日本代表を世界一に導き、メジャーリーグでもワールドシリーズ優勝を果たした。ところが、晩年はたび重なる故障に悩まされ、とりわけ2015年から日本に活躍の場を移すと、中日時代の2018年を除いて一軍のマウンドに登る機会は限られた。そして2021年10月19日、23年間のプロ野球人生に終止符を打った。

「大輔の引退試合を見て思ったのは、本来のパフォーマンスを出すにはあと半年はかかるのかなと。リハビリの過程なので、治るはずなんですよ。あそこがゴールではない」

 そう話したのは、"松坂世代"で元ヤクルトの投手、館山昌平だ。昨年5月頃に松坂と詳しく話し、状態を把握していたという。その時点から、ラストマウンドとなった日本ハム戦までをタイムラインで見ると、松坂は確実に前進し、肩周りの状態もよくなっているように館山の目には映った。

 やっぱり、あと半年はかかるのかな──。

 球速118キロ、ストライクをとるのに苦労する松坂の姿を見て、館山はそう思った。あと半年あれば、一軍のマウンドに戦力として戻ってこられるかもしれない、と。館山はそう想像しつつ、同時にプロ野球選手の"現実"が頭をよぎった。

「1年1年が勝負の世界なので、あそこがゴールなのかなと感じるところもありました。でも投げる姿を見て、『ああいうふうになってしまうんだ』とは思わなかったですね。最後のピッチングを見ても、よかった時の投げ方と構造的には変わっていません。少しずつ歯車の違いだったり、関節の位置だったり、いろんな問題が重なって、ああいうピッチングになったんだろうというのは、手にとるように見えましたし」

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