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プロ野球でクビから1年半で医学部合格。元DeNA寺田光輝の馬鹿にされてもめげない生き方 (5ページ目)

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 山本 雷太●写真 photo by Yamamoto Raita

【「何のための文武両道か」考える重要性】

 さらに、プロ野球を経験したことが、今の勉強にどんな影響を与えたのか、寺田に尋ねてみる。

「野球に限って言えば、やったことが結果に直結するわけじゃなかったので、それですごく悩んだりした部分は多かったんですけど、勉強ってけっこう、やったらやっただけ結果につながる部分があると思うんです。それを今、実感できていますね。だから、野球を経験していた分、勉強はなんていうか、もう一度やろうって気になりやすかったかもしれません。

 それに、やっぱり今は自分に興味がある勉強で、これまでの勉強とは違って、本当に自分がやりたい、将来仕事をするうえで直結するような内容なので、すごくやりがいを持ってやっていますよ」

 最後に寺田は、高校時代から勉強してストレートに医師を目指すのと、プロ野球を経て医師を目指すのとはどちらがよかったかについて、自分なりの文武両道の視点からまとめてくれた。

「僕の場合は、これまではずっと逃げて逃げて、また逃げてだったから。勉強したくないから野球に逃げたし、野球で無理だって思って次に逃げたのが医者で、この両方でずっと揺れ続けていたんです。

 でも、それって、一方から離れたからわかるよさっていうのもあるじゃないですか。僕は並行して、同時にやるというよりは、どちらか一方しかできなかったので。だから、完全にその世界から一回足を洗って、野球なら野球、勉強なら勉強って、どちらか一方にして、もう一方から離れてみる。そうすると逆側の世界がすごく輝いて見えたりしたので、これって、野球と勉強の両方あったからこそできたことだなって思いますね。

 もし文武両道を目指す学生さんがいるならば、何のために文武両道をするのかっていうのを、よく考えてねって伝えたいです。何のための文武両道なのかを考えてやらないと、ただの自己満足になっちゃう可能性もある。

 もちろん、両方同時にできるにこしたことはないし、それができたら選択肢の幅も広がるとは思います。でも、両方いっぺんにやるんだったら、意図とか、そういうのを考えてみても面白いんじゃないかって思いますね。僕は同時に何かをやるっていう意図を見出せなかったので、どちらかひとつずつになりましたけど」

 NPBという『武』から離れてみることで、ようやく医学という『文』の道を歩み始めることができた寺田の次の目標は、5年後の医師国家試験合格だ。

(おわり)

【profile】
寺田光輝 てらだ・こうき 
1992年、三重県生まれ。小学生から野球を始める。県立伊勢高校卒業後、2010年三重大学教育学部に進学するも中退。2012年には筑波大学体育専門学群入学し、野球部に所属。2016年にBCリーグ・石川ミリオンスターズに入団し、2017年NPBドラフト会議で横浜DeNAベイスターズに6位指名されて入団。2019年に引退し、2021年に東海大学医学部に入学した。
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須賀 和●協力 cooperation by Suga Yamato

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