広澤克実が比較した名将3人。野村克也、長嶋茂雄、星野仙一のなかでコメント力が「群を抜いていた」人物は?

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

 一方、野村と覇権を争った90年代の巨人は、松井秀喜、高橋由伸の生え抜きの強打者だけでなく、他球団のスラッガーを次々とFAで獲得するなど、超強力打線が完成した。このように長嶋は打撃重視と思われがちだが、勝ち試合では橋本清・河野博文・石毛博史に継投する「勝利の方程式」を確立するなど、実際は投手力も重視していた。

 また長嶋と言えば、セオリーよりも感性や勘で采配を振るうこともあり、「カン(勘)ピューター」と呼ばれることもあった。だが広澤はこう反論する。

「いや、意外とデータ重視。でも、ファンが持つ"長嶋像"を大事にしていて、細かな資料を気にかける自分の姿を見たくないだろう、ということをわかっていた。ベンチでは下を向いてブツブツとグチを言っていたこともあった。それでも、いざ顔を上げた時には一切そんな表情を見せなかった」

 長嶋は誰よりもファンを大事にし、時には"長嶋茂雄"を演じていたのだろう。

 いかにも対照的なふたりだが、監督時代はバチバチと火花を散らしていた。

「野村監督と長嶋監督は、お互いを意識しすぎてソリが合わなかった(苦笑)」(広澤)

 いろいろな判断をしながらゆっくり決断を下す野村が、巨人との試合が始まると冷静さを失っていたという。一方の長嶋も、野村からの再三の"挑発"に対して平然を装っていたが、実際は違っていたと広澤は振り返る。

「怒っていないフリをしながらも、怒っていましたよ(笑)。ヤクルト戦で先制されると、あの動じない長嶋さんがイライラし始める......」

 そんな指揮官の負けられない戦いに選手も触発されたのか、死球に端を発した両チームの乱闘事件も勃発したこともあった。

 しかし、2018年2月に行なわれた『ジャイアンツ×ホークスOB戦』で、ふたりが一緒に撮った記念写真を見た広澤はこんな印象を抱いたという。

「80歳を超えてお互いの思いは氷解していたのでしょうね。とてもいい写真でした」

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