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阪神ドラフト6位は今年も「隠れ即戦力」。「右打ち強打者」の豊田寛はなぜ下位指名だったのか (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 3年夏の甲子園では全5試合4番打者として出場し、打率.381、1本塁打、6打点の活躍で、チームを全国制覇へと導いた。そのすばらしいバッティングが強烈に印象に残っており、木製バットになったら、さらに存在感を出すだろうと楽しみにしていた選手だった。

【目指すべき打者像を見失った大学での4年間】

 だが、大学での4年間は"停滞"とまでは言わないが、打者として向かうべき方向に迷いがあるように見えた。投手に対して体があっさり正面を向いてしまい、うしろの肩(右肩)が早く出たがる傾向にあり、高校時代のようなコースに応じてスイングし、ボールの真っ正面を強烈に引っ叩くスタイルが見えなくなっていた。

 それが社会人に進み、昨年の後半あたりから徐々に本来のバッティングを取り戻し始めたように思えた。

「熾烈なトーナメントの野球に戻って、大学の時みたいに『打ち損じてもまた次がある......』といった緩さは許されなくなった。それがよかったのは間違いないと思います。好青年なので、ついつい流されてしまうところがありましたから」

 豊田をよく知る人は、そんな分析をしてくれた。ここ数年、プロ野球界は「右打ちのスラッガー」の需要が高まっている。だから今シーズン、そこに豊田がピタッとはまる存在になれるかも......と注目していた。

 一時期、レフト方向に偏っていた打球が、飛距離は保ったままセンター方向にも、ライト方向にも飛び出した。

 そしてハイライトは、今年10月の都市対抗の北関東予選だった。

 10月3日、SUBARU(旧・富士重工業)を相手に、この試合の最初の打席で日立市民球場のライト中段までボールを運んだから驚いた。聞けば、3日前のエイジェック戦との試合でもバックスクリーン横へホームランを放ったという。

 都市対抗予選というのは、普通の試合じゃない。むしろ、東京ドームでの本戦以上の緊張が張りつめるとも言われる。そんななかで実力を発揮するのは並大抵のことではない。

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