スカウトが悩んだ日本ハムドラフト8位・北山亘基の「完成度」。武器は、考える力とピッチングへの好奇心

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

「こういうピッチャーの判断が一番難しいんですよ。致命傷になるほどの欠点はないけど、『これなら!』って強く推せる材料もない。とはいえ、何年もの間、エースとしてコンスタントに投げ続けた実績と経験は大きな武器になる。『どうするかなぁ......』と悩んでいるうちに、指名がどんどん進んでしまった」

 先日、あるスカウトと話をした際、京都産業大からドラフト8位で日本ハムに指名された北山亘基の話題になった。指名された時、思わず「うわっ!」と声が出てしまった。指名されたことに驚いたわけじゃなく、これほど実績を持った選手が8位まで残っていたことが衝撃だったのだ。支配下ドラフトで指名された77選手のうち、北山は「76番目」だった。

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【スカウトが判断に苦しんだ北山亘基の"完成度"】

 北山は大学入学直後の1年春からリーグ戦で登板し、以来、エース格として投げ続けた(2020年春のリーグ戦はコロナにより中止)。4年間で43試合(247イニング)に登板して、通算14勝13敗、防御率2.00、奪三振235。

 京都成章高校のエースとして甲子園で投げた時は、そこまで印象に残った投手ではなかったが、大学に入ってからは体に厚みが増して、球速もコンスタントに140キロ代中盤をマークするようになっていた。大学2年の頃には、高校時代の非力感は完全に消えてきた。

 それ以上に「いいな」と感じたのが、高校時代から漂わせていた品のあるマウンドさばきが失われていなかったことだ。「150キロを投げたい」とか、「三振がほしい」とか、そういう欲を感じることがない。

 間違いなく体は強くなっているのだが、そこに頼ったピッチングをしない。力任せに投げるのではなく、時に打者のタイミングをうまく外しながら丁寧に投げ込んでいく。気がつけば、試合終盤まで2、3点に抑え、ゲームをつくっている。

 失点を計算できる投手──こういう投手が首脳陣にとっては、じつは一番ありがたいのではないかと思う。だが、別のスカウトはこう語る。

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