2021.12.17

阪神ドラフト6位は今年も「隠れ即戦力」。「右打ち強打者」の豊田寛はなぜ下位指名だったのか

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 今年1月に『web Sportiva』のコラムで「一軍の戦力にぴたっとハマる。早川、佐藤だけじゃない即戦力ルーキー」と題して、ドラフト上位指名ではないが、たしかな実力を持った選手として阪神が6位で指名した中野拓夢(三菱自動車岡崎)を紹介した。

 その中野は、阪神のレギュラー遊撃手としてシーズンをまっとうし、盗塁王を獲得する活躍を見せた。正直、タイトルを獲るほどの活躍までは予想していなかったが、それでも中野の走攻守の実力に関しては"確信"を持っていた。

 ならば、今年のドラフトで指名された選手のなかに「隠れ即戦力」は潜んでいるのだろうか。

阪神からドラフト6位で指名された豊田寛阪神からドラフト6位で指名された豊田寛 この記事に関連する写真を見る

【高校2年から名門の中軸を担ったセンス抜群の打撃】

 先日、何気なく昔のスコアブックを眺めていると、こんなメモ書きがあった。それは2014年7月27日、神奈川県大会でのある試合のことだ。

<2回戦で満塁弾、ここまで11打点。第1打席、サイドハンドの外角高めのスライダーに軸を崩さず、体重移動しながらバットヘッドを立てるようにして叩いたすばらしい打ち方の打球がライトスタンド中段へ。第2打席、真ん中の速球を左中間最深部上段へ連続ホームラン。打ちにいく時のタイミングのよさ、形にとらわれない運動量抜群の伸びやかなスイングに目を奪われる。ポイントを近くに置いて、そこから押し返せる長打力は木製バットでもOK。力みすぎずに芯でとらえる才能が光る。自分の感性で伸びやかに振れることに大きな伸びしろを感じる>

 今から7年前、当時、東海大相模の3番を打っていた豊田寛のプレーについてのメモである。当時はまだ2年生だったが、すでに全国屈指の強打線の中軸を任されていた。高校卒業後は国際武道大から日立製作所に進み、この秋のドラフトで阪神に6位指名された。

 もともと、コースに逆らわずに広角に距離を出せる"天才型スラッガー"だった。

 高校生ながらパワーは十分で、しかも金属バットなら「飛ばしたい」と思うのが普通だろう。しかし、豊田のバッティングにはそうした欲をまったく感じない。じつに自然にスイングして、それでいてとらえた時の打球は飛距離が出る。