一軍の戦力にぴたっとハマる。早川、佐藤だけじゃない即戦力ルーキー (2ページ目)
自主トレーニングに励む阪神ドラフト6位の中野拓夢 では、今年のルーキーのなかで小深田のように一軍の戦力にハマる選手は誰か。小深田をモデルケースとすると、重なってくる選手がひとりいる。阪神6位指名の中野拓夢だ。
高校(日大山形)、大学(東北福祉大)、社会人(三菱自動車岡崎)とショート、セカンドを守って、とにかくうまい選手だった。捕球から送球までの一連の動作によどみがなく、いわゆる投手が「打ち取った」と思った打球を確実にアウトにできる選手。投手に最も信用されるタイプの内野手だ。
昨シーズン、阪神は12球団ワーストの失策数を喫し、とくにスローイングエラーが多かった。先発投手陣を見ても打たせてとるタイプがほとんどで、力で抑え込む剛腕タイプはほとんどいない。投手陣にとっても、打ち取ったはずの打球を確実にアウトにしてくれる内野手が加わったのはなによりの朗報だろう。
昨年、遊撃手として最も出場機会が多かったのが木浪聖也。守備率.980と及第点の結果を残したが、まだまだ絶大の信頼を寄せる域には達していない。
セカンドは堅守の糸原健斗が中心だったが、夏に有鉤骨を骨折。すでに完治はしているが、糸原は待って捕球するタイプで、本質的には三塁手向きだと見ている。そこで中野が一枚加わることで起用のバリエーションが一気に広がり、ベンチワークに余裕ができるのも大きい。
中野の守備ばかりを取り上げてきたが、意外性のあるバッティングにも注目している。大学から社会人に入りたての頃は、バットコントロールがうまい印象だったが、社会人の1年目の後半あたりから中軸を任されたこともあり、スラッガータイプへと変貌を遂げた。
走塁も、盗塁をガンガンするタイプではないが、スイングした後のスタートの早さ、タッチアップでの本塁突入時のスピード感には思わず目を奪われる。
練習で目立つタイプではないかもしれないが、オリックス・福田周平のように実戦で起用されるうちになくてはならない選手になれると見ている。
今の阪神には少ない、本当の意味で「野球センス」の光る選手。上本博紀がチームを去った今(現役引退)、気の利いたプレーができる選手は貴重だ。
紅白戦、オープン戦を経て、ペナントレースに突入するが、気がつけば、中野がいつの間にか一軍に定着して、立派な戦力となっている。中野はそんな可能性を秘めたルーキーである。
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