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今オフ移籍の可能性は中日・又吉のみ。なぜ日本のFA制度は活用されないのか? (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【興味深い選択をした中日・又吉克樹】

 多くの選手が「行使せずに残留」を選択している。そのなかで千賀には異なる意味合いがあり、来季海外FA権を取得すると見越してオプトアウト条項をつけたのだろう。

 FA権は持っているだけでも価値があり、株式でいう「レバレッジをかける」(少ない投資金額で大きな金額を得ること)ような使い方もできる。わかりやすいのが今季の宮﨑のケースだ。

 保留制度----つまり所属球団の保留下に置かれてきた選手は、概してFA宣言して市場に出た場合、球団間で獲得競争が起きるため、自身の価値(契約条件)を高められる。選手はその権利を取得することで、所属球団に残留するとしても、長期契約や年俸アップを得やすくなるのだ。

 つまりFA権を取得した選手にとって重要なのは、「自分はどんな選択をすれば幸せになれるか」を熟考することだと言える。戦略プロデューサーでプロ野球選手会の山崎祥之広報は、多くの選手の決断に寄り添いながら、FA権についてこう感じている。

「本質的にFAって、自身をどう幸せにするものなのか。不幸にするリスクもありながら、どういうものかという結論を、取得する前から自分なりに持っている選手は幸せになるという感じがします」

 上記の意味で、興味深い選択をしたのが又吉克樹(中日)だ。現在、停滞するFA市場に唯一、名乗りを挙げているなか、行使した理由をこう説明する。

「移籍するにしろ、残るにしろ、どこでいい恩返しができるか。独立リーグに夢を与える意味でも、いろいろな条件提示を聞いて判断したい」(11月29日付の『日刊スポーツ』電子版より)

 又吉は四国アイランドリーグPlusの香川オリーブガイナーズから2013年ドラフト2位で中日に指名され、セットアッパーの座を勝ち取った。

 サイドスローという特殊性も備える右腕には、FA宣言するうえで明確な動機がある。奇しくも今季のFA市場は停滞しており、投資したい球団にとって唯一の選択肢になるという意味において、相対的にも自身の価値を高められるかもしれない。

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