今オフ移籍の可能性は中日・又吉のみ。なぜ日本のFA制度は活用されないのか? (5ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【プロ野球はビジネスである】

 ひとつ付け加えたいのは、日本ハムの行為は野球協約第69条(保留されない選手)に則っており、微塵も悪くない、ということだ。むしろ、球団経営をシビアに捉えている証とも言える。

 今季の年俸は、西川が2億4000万円(チーム2位)、大田は1億3000万円(同5位)、秋吉は5000万円(同13位タイ)。今季途中に巨人へ無償放出した中田翔(3億4000万円)を含めると、7億6000万円を削減する計算だ。

 中田の年俸について厳密に言えば、退団後、8月20日から11月30日までの期間分は日割り計算して巨人の負担となる。あくまで目安としての金額だが、日本ハムのチーム総年俸が22億8169万円(日本人の支配下選手のみ)だったことを考えると、コストカットのインパクトがよくわかるだろう。

 あらためて感じるのは、プロ野球はビジネスであるということだ。選手、球団、ファンの間に交錯する愛や忠誠心、時として裏切りも物語のドラマ性を高めるが、お金の動きを冷静に見るとビジネスとしての面白さが浮かび上がってくる。愛、お金はどちらも大切だ。

 12月5日にはロッテが全選手に対し、一律25%ダウンで契約更改交渉を始めることを通達したと報じられたが、コロナ禍の球団経営は厳しい。選手たちは"厳冬"を肌で感じ、残留という選択をしたのかもしれない。

 異常ある、今オフのFA戦線----。

 多くの視点を持ってその背景を眺めると、プロ野球の魅力や面白さ、深みがグッと増してくるはずだ。

(第2回につづく

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