オリックスのリーグ制覇はなぜ実現したのか。OBの日本一戦士が比較する「仰木野球」と「中嶋野球」 (6ページ目)
── いよいよCSファイナル、その先には日本シリーズがあります。短期決戦の戦いがあるとすればどのようなことでしょう。
「人それぞれ考え方はあると思いますが、出だしを間違えると修正が効かない。だから、とにかく先に攻めていくこと。後手にまわると体って動かなくなるんです。そのためにもどう先手を打てるかを考える。具体的には、初戦の先発投手をイメージして、その投球から狙い球を絞ることもひとつでしょう。
96年の日本シリーズは巨人が相手で、ピッチャーは槙原寛己さんや斎藤雅樹さんなどすごいピッチャーばかり。制球力もよく四球なんて考えられないから、ボールが見えたら振るという意識で臨みました。とにかく受け身になったら、自分のスイングをさせてもらえないと思っていました」
── プロ入り前、社会人やバルセロナ五輪の日本代表メンバーとして短期決戦を経験した立場としては「迷わず攻めろ」ですか。
「勝利を考えがちですが、いかに結果を意識せずにプレーできるか。それはプロアマ問わず、共通した臨み方だと私は思っています」
── オリックスOBとして、今の若い選手たちはどのように映っていますか。
「いい緊張感のなかで選手たちがプレーしているのがうかがえます。吉田正尚という中心打者に、杉本裕太郎、宗佑磨、福田周平が加わったことで、チームはより機能するようになった。中嶋監督が気を配りながら、上手に使っている。絶妙な感じでポジションを与えましたよね。福田はセカンドでポジションを掴むのは難しいかなと思っていたら、センターにまわって生き返りましたからね。宗にしても、これまではいろんなポジションを経験しましたが、どこもパッとしなかった。それがサードで固定したことで、リーグ屈指の守備力を誇る選手になった。
ともにミスもあったと思うのですが、中嶋監督はダメという判断をしなかった。選手も監督を信頼して自信を持って自分のプレーに徹するようになった。福田や宗というのは、監督にとって生かされた好例ですね」
── 当然、選手の能力を理解しているから、このようなことができると?
「チャンスを与えるというのは、選手にとってはうれしいことではあるのですが、プレッシャーでもあるんです。結果を残さないと次がない世界ですからね。監督としても、ただチャンスを与えるのではなく、ちゃんと結果を残せると判断したから起用したと思うんです。そういう意味では、仰木さんと共通した起用法だと思いますね」
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