オリックスのリーグ制覇はなぜ実現したのか。OBの日本一戦士が比較する「仰木野球」と「中嶋野球」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 今季、1996年以来となるリーグ制覇を果たしたオリックス。中嶋聡監督のもと、エース・山本由伸、強打者・吉田正尚といった投打の軸を筆頭に、新戦力が次々と台頭するなど、これまでの鬱憤を晴らすかのような圧巻の戦いを見せた。そんな2021年のオリックスは25年前の"V戦士"の目にはどのように映ったのか。今回、藤井康雄氏、大島公一氏の2人に1996年の「仰木野球」と2021年の「中嶋野球」について聞いた。

オリックスを25年ぶりのリーグ制覇に導いた中嶋聡監督オリックスを25年ぶりのリーグ制覇に導いた中嶋聡監督この記事に関連する写真を見る■藤井康雄氏

── 25年ぶりのリーグ優勝。当時と今を比較して、チームにはどんな共通点、あるいは違いがあるでしょう。

「優勝するだけあって、当時も今もチームバランスがいいですね。今なら山本由伸、宮城大弥などの先発陣が盤石で、攻撃陣では吉田正尚という傑出した打者を軸に、宗佑磨、杉本裕太郎、紅林弘太郎ら一軍としては新戦力が台頭して得点力をアップさせた。

 当時は長谷川滋利、星野伸之、野田浩司ら先発陣がいて、鈴木平、野村貴仁、平井正史らの中継ぎ抑えに繋いでいく。打線はいうまでもなく"猫の目打線"です(笑)」

── 前日と翌日と、まるで猫の目のようにクルクル変わる打線からついた異名ですね。

「そうです。当時の仰木彬監督が就任した94年から打者の起用は相手投手との相性重視になっていたのですが、日本一になった96年のみならず、初優勝した前年の95年にはすでにクルクル変わっていたんです。前日に猛打賞の活躍をしても、翌日は先発との相性が悪ければスタメンを外れる。そんなことは日常茶飯事でした。不動だったのはイチローと田口くらいだったかな」

── 選手としては面白くなかったのでは?

「そりゃ面白くはなかったですよ。ただ起用に文句を言うわけにもいかない。データは正直ですしね。実際、打てていないから外されたり、打順を下げられたりするわけで。逆に不調でも、相手投手から打っているという理由で4番に戻ったこともありました。僕の場合、当時ダイエーだった工藤公康投手はお得意様だったので、前日に6番で無安打でも、翌日の試合は4番に上がっていたり(笑)。

 でも、そうしているうちに選手も慣れてくるというか、対応力が身についてくる。たとえスタメンを外れていても『2番手以降で必ず出番が回ってくるから、きっちり準備しておこう』と集中力を維持したり。そういう意味ではプロフェッショナルになっていきましたよね。なにより95年はその戦いで優勝したので自信になり、日本一になった96年はそれがうちのカラーだと納得するようになっていました」

1 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る