今シーズンいまだ一軍登板なし。斎藤佑樹「もうこんな時期......焦りはある」 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

---- 今までの斎藤投手は、そこはデータを見ずに感じとっていたわけですよね。

「だからそこで難しいなと思うのは、打ってこないところへ投げればいいやという僕の感覚って、右脳で考えていることじゃないですか。でも今の僕がおもしろいと思っているのは左脳で考えていることなんですよね。やっぱり僕はマウンドでは右脳を大事にしたいし、バッターに対する自分の感覚を大事にしたい。データはこうだとしても、「いや、ここはストレートで勝負したい」と感じる時がある。その結果、打ち取ったときの喜びは大きいんです。そこは野球人として大事にしたいし、感覚とデータのバランスは常に意識しなきゃなと思っています」

---- 逆にデータを活かせる左脳のピッチングはどんなイメージなんですか。

「わかりやすいデータで言えば、相手バッターの打球速度と打球角度が数字で出るじゃないですか。たとえば打球速度が遅いのに打球角度が高い選手ってフライアウトが多いんです。だったらフライを打たせればいいという答えが出てくる。そのバッターはホームランを打ちたいから打球角度を上げたいと思っているわけで、じゃあ、実際にホームランを打ってるボールを見たら、打球速度が遅いんだから、どうしても限られてくる」

---- そのボールさえ投げなければ大丈夫だと......。

「厄介なのは打球角度が低いのに打球速度が速いバッターで、打球確度が低ければフライアウトを取りにくくて、ヒットになりやすい。しかも打球速度が速いから長打になるケースも増えてくる。そういうバッターにはゴロを打たせたいと思って投げます。どんなに強い当たりでも野手の正面ならアウトにできますからね」

---- なるほど......だからこそフォーシームのスピードが足りないことで、そういう駆け引きを体現できないもどかしさがあるんですね。

「ホント、そういう気持ちにちょくちょくなります。上沢(直之)も伊藤大海もフォーシームは150キロ、スライダーが130キロ台の中盤でしょ。それって今の僕が全力で投げたフォーシームと変わらない。彼らにとっての半速球ですよ。僕はフォーシームが135キロ出たとしても、ツーシームが130キロ、スライダーが120キロという幅のなかで戦っている。それが上沢や大海にとっては全部が半速球になっちゃうんだから......自分では「バッターの反応次第なんだから、関係ない、関係ない」と思うようにしていますけどね」

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