今シーズンいまだ一軍登板なし。斎藤佑樹「もうこんな時期......焦りはある」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

---- アンテナというところで、最近、刺激を受けたり、おもしろいなと思ったことがあったら教えて下さい。

「おもしろいと思ったことですか......なんだろう。僕、本はけっこう読み慣れていて、かなりのスピードで読めるんですけど、おもしろいと思うのは、自分が実践していることを言葉にしてくれている本だったりするんです。最近だとアドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健)に共感しました。要は、他人のことは気にするな、自分のやるべきことにだけ集中すればいい、他人が何をしようと自分がやることは変えられないから、という内容です。それは僕も言葉にしたことはなかったんですけど、ああ、そういうことだなと思えたので......」

---- その考え方が野球に生きることはあるんですか。

「それがあるんですよ。逆説的なんですけど、今までは自分さえちゃんとしていれば野球って結果が出るものだと思っていたんです。相手を見てもしょうがない、自分のピッチングさえできれば、それ以上はできないし、それ以下もないと思っていました。でも、相手を見ることって大事なんじゃないかなと思ったんです。野球は相手があってこそのスポーツです。だったら自分の持っているカードをただ披露すればいいわけじゃなくて、それを相手の弱点に落とし込まなきゃいけない。それを落とし込むことが、野球のおもしろさだと思えるようになりました」

---- でも斎藤選手って、もともと相手が見えることを評価されてきたピッチャーですよね。

「だからアドラー心理学の話で言うと、それは僕の感覚であって、それが本当にそうなのかはじつは第三者が判断してきたことなんです。結果が出ていたから、相手が見えていると周りから言ってもらえる。でもデータを分析すれば、本当はどうなのかが検証できます。たとえば『このバッターはスライダーを振ってこないから、真ん中にポンと投げればいい』と思えた感覚って、そもそもこのバッターは初球を振らないとか、初球のスライダーには手を出さないタイプだったのかもしれない。分析したら、確かにそうだったということが数字に表れていたりする。それが今はものすごくおもしろいんですよね」

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