山本昌が完全復活目指す藤浪晋太郎を採点。「78点」の根拠を解説する (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 この言葉に、山本昌氏が考える藤浪のメカニズムが狂った原因が凝縮されている。

 山本昌氏が臨時コーチになった2019年秋、藤浪の状態はどん底に近かった。上半身と下半身の動きがバラバラで、リリース時にボールにしっかりと力を伝えられない。山本昌氏がとくに問題視したのは、リリース時に藤浪の手首が寝ていたことだった。もともとは立っていた手首が傾くようになり、ボールが抜ける原因になっていたのだ。

 藤浪の手首が寝るようになった理由を山本昌氏はこう見ている。

「藤浪くんはいいスライダーを投げますが、スライダーを多投するピッチャーの多くは無意識のうちに手首が寝てしまう傾向があります。彼もスライダーに頼るうちに、ストレートを投げるときでも手首が寝るクセがついてしまったのでしょう」

 改善に取り組んだ結果、ここ数年悩んでいたものが、昨シーズン途中(秋頃)には一気に自分の感覚がよくなってきてようで、ボールが抜ける頻度が減り、勝つためのボールを磨いていた。山本昌氏は「もうボールが抜けないように......と調整する段階は過ぎた」と評価する。

「今の藤浪くんは勝つためのボールを追い求めています。もともとは2ケタを勝てるだけの能力があるわけじゃないですか。そして彼はタイトルを獲ったことがある(2015年・最多奪三振)。タイトルを獲れるボールがどんなものかを知っていて、ようやくそのボールに近づけるための努力をし始めた。私はまたタイトルを獲れるピッチャーに戻れると思っています」

 それでも、まだ課題は残っている。ワインドアップ投法でダイナミックさを増したとはいえ、山本昌氏の目にはまだ藤浪の腕の振りが大人しく映っている。

「ストライクゾーンに収めようとする意識があるからか、モーションの途中で腕がわずかに止まっているように見えます。もう少し腕の振り幅を大きく、大胆にとれるようになるともっとよくなるでしょうね。以前はできていたことですから」

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