千賀も驚愕。ホークスの天然キャラ右腕のポテンシャルはお化け級 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕延期となり1カ月以上に及んだ自主練習期間には、投球フォームにさらにメスを加えた。1月に覚えたのは千賀を参考にした投げ方だったが、習得したのはメジャーリーガーを模したものだった。

「ドジャースのウォーカー・ビューラーを参考にしているんです」

 ビューラーは細身ながら100マイル(約161キロ)のストレートを投げ込み、2019年シーズンに14勝4敗の成績を残した26歳の右腕だ。コロナ禍により試合のない期間をどのように過ごすかを考えた杉山は、とにかく体を徹底的に鍛え上げることにした。その結果、体重は自己最重量となる106キロまで増えた。

 プロ入り時からもともとストレートは速かったが、もう一段階ギアが上がったのはこのタイミングだった。

 二軍では格の違いを見せつけ、シーズン開幕から1カ月も経たない7月8日に一軍昇格。ただ、この時はわずか1週間で二軍へ逆戻りとなった。工藤公康監督から「変化球のコントロールに難あり」と指摘を受けたためだ。

 苦労したが、その改善に取り組み、9月29日に一軍再昇格。そのまま、シーズン終了まで一軍に帯同し、日本シリーズでもベンチ入りを果たした。

 そんな投手がなぜいまだに勝てないのか。また、勝ちのつく場面での登板が少なかったのか。それは、杉山の投げるストレートに欠陥があるからだった。

 先述した日本シリーズの登板でもそれは明らかだった。なかでも最初の対決となった松原への投球である。松原はシーズン3本塁打を放っているが、身長173センチの小兵に154キロのストレートをライトフェンス際まで運ばれた。ライトを守る上林誠知がジャンピングキャッチして事なきを得たが、杉山は肝を冷やしたに違いない。

 このシーンは偶然ではなく、レギュラーシーズン中も何度かあった。それどころか、二軍の試合ですら珍しいことではなかった。

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