低身長をも武器にする。「小さな大投手」たちがプロで輝ける理由 (2ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi
  • photo by Kyodo News

 小川よりもさらに小さい167cmの石川は、プロ1年目の2002年に12勝(9敗)を挙げて新人王に輝くと、5年連続で2桁勝利を挙げ、2008年には最優秀防御率とゴールデングラブ賞のタイトルも獲得した。ヤクルトひと筋で積み上げてきた勝利数は173。今シーズンは8敗と苦しみながら2勝を挙げ、プロ入り以来続いている19年間連続勝利を達成した。40代投手の勝利は、球団史上3人目、チームの生え抜き選手としては初の快挙で、来シーズンの記録更新も期待されている。

 石川の武器は、緻密なコントロールと、シンカーをはじめとする多彩な変化球。そして球速こそ140キロ台前半だが、打者には「速く見える」というストレート。それらを巧みに使い分ける石川の投球術が、長年に渡って活躍できている要因だろう。

 石川と同じように、速いボールに頼らないピッチングで活路を見出したのが巨人の田口麗斗。今シーズンは主に中継ぎとして起用され、巨人のセ・リーグ連覇に貢献した左腕も、身長は171cmと決して恵まれてはいない。

 直球のスピードは140キロ台中盤。それでも、切れ味がいいスライダーや制球力を武器に2年目から頭角を現し、今では先発、リリーフをこなすチームに欠かせない存在になっている。

 かつて、巨人の投手コーチとして田口を指導した尾花高夫(現ヤクルト2軍投手チーフコーチ)は、田口が初めて2桁勝利の10勝(10敗)を挙げた2016年に「速いボールはないが、低めへの変化球がきちんと投げ分けられる。思い切り腕を振って速い球を投げることばかり考える投手も多いなかで、自分をよく知っている」と取材陣にコメント。低身長での投手としての生き方を見出したことが、これまでの活躍につながっている。

 かつて日本ハムでセットアッパーやクローザーを務めた身長170cmの武田久も、140キロ台中盤のストレートや変化球で、2006年に最優秀中継ぎ、クローザーに転向した2009年からは最多セーブのタイトルを計3回も獲得した。

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