巨人・高梨雄平「えっ!」と驚く
ドラフト秘話。楽天が評価した理由
2016年のドラフトで、JX−ENEOSの高梨雄平が楽天から9位で指名された時には「えっー!」と声が出るほど驚いた。
ドラフトにはサプライズはつきもので、1986年にONOフーズの森山良二を西武が1位指名したことにも驚かされたし、2011年に日本ハムが早稲田大のソフトボール部に所属する大嶋匠を7位指名した時にもビックリしたが、高梨の指名もそれぐらいインパクトがあった。
トレードで楽天から巨人に移籍した高梨雄平 それほど、当時、社会人2年目の高梨は、失礼な言い方だが平凡なピッチャーだった。そもそも早稲田大学時代も、3年春ぐらいまでは順調にきていたが、その後は肩の故障もあって調子を落としていた。だから、社会人の強豪・JX−ENEOSが高梨を獲得したこと自体、驚きだった。
たしかに、3年春に東大戦で東京六大学史上3人目の完全試合を達成して一躍注目を集めたが、その一戦にしても高梨の野球人生にとって"一世一代のピッチング"をしたとしか思えなかった。てっきり、JX−ENEOSは打者として採用したのかなと思ったほどだ。
じつは、高梨には打者としての才能を感じていた。川越東高では「エースで3番」を任され、センス抜群のバッティングを見せていた。
高校通算50本を打つようなスラッガーではなかったが、チャンスで打席に入ると、ファーストストライクからきっちりタイミングを合わせてきて、右中間、左中間にきれいな弾道のライナーを放つ。バットのヘッドを長く走らせる美しいバッドスイングは"品格"と"風格"が同居していて、打者としては間違いなく"超高校級"だった。
大学、社会人に進んでも高梨は打者ではなく投手として研鑽を積んだが、とくにJX−ENEOSでは実戦登板の機会は決して多くなかった。
そんな時、学業も優秀な高梨には「野球を終えたら早めに社業に専念してもらって、そちらのほうで会社に貢献してもらおう」というつもりで採用されたのだという話を関係者から聞いた。
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