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吉川尚輝が絶望から復活。超一流の
スピードが守備では弊害になっていた

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 インタビューする相手の成績が悪いときは、取材前からこちらも勝手に重苦しさを感じてしまう。ましてや、もともと口数の多くない選手であればなおさらだ。

 吉川尚輝(巨人)へのインタビュー当日、それまでの打撃成績は12打数1安打、打率.083だった。

 中京学院大時代やプロ入り後の吉川の取材対応を見てきて、自分のプレーについて饒舌に語るタイプではないことは知っていた。あまつさえ打撃で結果が出ていないとなれば、さらに口が重くなるのではないか......という不安も募った。

昨年は腰のケガにより、わずか11試合の出場に終わった巨人・吉川尚輝昨年は腰のケガにより、わずか11試合の出場に終わった巨人・吉川尚輝 ところが、ウェブカメラをつないでのリモートインタビューとなった今回、カメラの前に座った吉川は今までになく泰然としているように見えた。

「守備の話を中心にお聞きします」と告げても、表情は変わらない。てっきり、ホッとした様子を見せるのではないかと思っていたからだ。

 吉川の守備の礎(いしずえ)は、2018年まで巨人のコーチを務めた井端弘和さんによって築かれた。

「守備の基礎をイチから教わりました。今でも井端さんに言われたことは頭に入れながらやっていますし、今になって井端さんが言っていたことの重要性や深みがあらためてわかってきた部分もあります」

 プロ入り1年目、吉川は大学時代とは別次元のプロの速い打球に対応できずにいた。井端さんからグラブを早く出して準備すること、股関節の上に上体を乗せた状態で投げることなど技術的なアドバイスを受け、貪欲に吸収した。

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