2020.05.07

大谷翔平はマンガを超える伝説級の存在。
指名打者→クローザーのち衝撃が走った

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

日本プロ野球名シーン
「忘れられないあの投球」
第5回 日本ハム・大谷翔平
CSファイナル第5戦(2016年)

 ある漫画家が、呆れたような口調でこう吐き捨てた。

「大谷が出てきたせいで、プロ野球の漫画を描きたいと思わなくなりましたよ」

 フィクション泣かせの実在の人物。それが大谷翔平である。

 2016年10月16日、日本ハムとソフトバンクのクライマックスシリーズ(CS)ファイナル第5戦。勝てば日本ハムの日本シリーズ進出が決まる大一番に、大谷は「3番・指名打者」で先発出場する。7対4とリードして迎えた9回表、日本ハムは指名打者を解除し、大谷をマウンドに送った。

日本プロ野球史上最速となる165キロをマークした大谷翔平 もし、大谷の出現以前に漫画家がこんなシーンを作中に描こうと思ったら、世に出る前に担当編集者からボツを食らっていたに違いない。それだけ大谷の”二刀流”は現実離れしていた。投手と指名打者の2部門でベストナインを受賞する人間が現れるなど、誰が予想できただろうか。

 そして大谷はこの日、自己最速の165キロを計測してしまう。

 一死から打席に吉村裕基(現・琉球ブルーオーシャンズ)を迎えた場面の初球。低めのストレートに吉村のバットが空を切ると、スタンドは猛烈な歓声に沸いた。スピードガンに日本国内で誰も見たことがない数字が表示されたからだ。

 とはいえ、大谷本人にとっては満足のいくボールではなかったに違いない。低めにわずかに沈んでいく球筋は、俗に言う「垂れる」ボールだった。それでも、「165」という数字と三者凡退で試合を締める圧巻の結果で、大谷は伝説になった。