八重樫幸雄が語るヤクルト80年代投手「能力が菅野より上と思うのは...」 (2ページ目)
【悲運の投手・高野光の思い出】
――では1983年ドラフト1位・高野光投手の印象は?
八重樫 当時、「これはすごいピッチャーだ」と思ったのは高野でしたね。彼は、すごい能力を持っているのに考え方が甘い。それがもったいなかったな。彼のストレートは全盛時の江川卓(元巨人)のようにホップするんですよ。
身振り手振りを交えて当時を語る八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi――高野さんはルーキーイヤーの1984年、いきなり開幕投手を任されたことでも話題になりました。どのように「甘い」のですか?
八重樫 当時、彼の在籍していた東海大学がとても強かったせいなのか、大学時代から7~8割の力で投げるクセがついていたんだよね。だから、ここぞっていう場面で力を入れることができなかった。ボールツーから簡単にストライクを取りにきて、一発を打たれる。そこから本気で投げ始めるんだけど、結局は1点差、2点差の僅差で敗れてしまう。そんなことが多かったな。
――190cm近い長身から投げ下ろす角度のあるストレート、大きく落ちるフォークボールなど、本格派投手としての一面を持ちながら、「気が優しすぎる」という評価もありました。八重樫さんはどう見ていましたか?
八重樫 気持ちが優しいというか、いろいろなことを気にしすぎてしまうんですよね。彼の能力に(荒木)大輔の気持ちがあれば、ラクに20勝はしていたと思いますよ。能力的にいえば、今の菅野智之(巨人)よりも上だと思うな。試合で打たれると、本当にしょぼーんと落ち込んでいたし、ときには泣いていた。いくら慰めても泣いていた思い出があるよ......。能力があるから、僕らも何とかしてあげたかったんだけど。
――誰にも負けないストレートとフォークを持っていただけに、「もっと気が強ければ......」という無念が残りますね......。
八重樫 高野の能力に大輔のハートが加われば、本当にいいピッチャーになったと思うよ。今、話にあったように、彼は長身から投げ下ろす角度のあるストレート、フォークが武器で、カーブも大きく曲がるんで勝負球にもできた。逆にフォークはほぼ全部がワンバウンドになる見せ球だったな。1試合で20球以上もワンバウンドを投げるから、翌日は体中が青タンだらけ。それでも、一個も後ろに逸らさなかったよ。大変だったけど(笑)。
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