平石洋介がPLの同級生に告げられた
21年目の真実。「救われた」 (3ページ目)
この決断が大きな間違いだった。目一杯、ライトが下がっていると思いながら、ベンチでの平石の指示を見ていたファーストの三垣勝己が、ファーストベースから離れてしまったのだ。
その刹那、平石が気づく。
「三垣、違う! ベースに戻れ」
しかし声を張り上げた時には、投手の上重聡はすでに投球モーションに入っており、一塁走者の加藤重之がスタートを切っていた。バッテリーのウエストも実らず盗塁を許し、直後に小山のセンター前で同点とされた。
平石は自分の判断ミスから同点を許した一連のプレーを悔いた。「思い出したくない」と目を背け、つい最近まで、心の奥底でわだかまりとして残っていた。
だが、この一件も平石の思いとは違っていた。気づかされたのは捕手・石橋勇一郎の回想だった。
「あれはランナーを走らせようとしてやったことだから。あの時、オレもアイコンタクトしてたんだよ」
「は?」
平石がまたも目を丸くする。
要するに、平石が21年間も自分のミスだと信じ込んでいた三垣への伝達は、じつはバッテリーを含めたアイコンタクトで成立していたのだ。
事実、カウント2ストライク1ボールからの4球目、石橋は大きくウエストしている。つまり「とっさに外した1球」ではなく、相手を仕留めるための作戦だったわけだ。ただ、その作戦に引っかからず、二盗を成功させた加藤が一枚上手だったということである。
「おまえ......それもっと先に言えよ! 今までずっと、あれが嫌で嫌で。おまえら本当にやろうと思ってたの?」
すると石橋は、いともあっさりこう答えた。
「やろうと思ったからやってん。そしたらめっちゃいいスタート切られた」
21年目にして思わぬ真実を告げられた平石が、少し安堵したように「あのシーン」についてあらためて語る。
「結局、僕がファーストのポジションを下げた云々ではなく、ファーストランナーを刺す前提での作戦をやろうとしていたみたいです。あのプレーについては本当に後悔していたし、わだかまりとして残っていたんですけど、あいつらの話を聞いて少し心が救われたっていうのはあります」
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