平石洋介がPLの同級生に告げられた21年目の真実。「救われた」 (2ページ目)
ただし、ひとりだけ例外がいた。この試合で先発した稲田学は「平石の声を聞いて打った」と言うのだ。
2回裏、一死二、三塁。カウント1ストライクからの2球目。平石のかけ声は「いけ! いけ!」だった。外角である。実際、小山は外角に構えていたが、カーブは逆球となってインコースに入ってきた。それでも変化球が頭にあった稲田はうまく反応し、センターへの犠飛となった。その後も打線がつながり、PLは幸先よく3点をリードした。
じつは平石がそのことを知らされたのは今年の1月。同級生が集まった場でのことだった。
「そうやったんや!」
21年目の真実に、平石は目を丸くした。
「ああやって、僕のかけ声がみんなを打たせたみたいになって放送されるのが申し訳なくて......。それが嫌で、取材のたびに訂正させてもらっていたんですけど、稲田からその話を聞いて『お前、オレの声を聞いて打ったんか』って(笑)」
もうひとつ、この同級生の集まりで初めて知った真実があった。それは今まで平石が「いまわしき記憶」として忘れたくても忘れられない8回裏のシーンだ。
PL学園1点リードの8回裏、二死一塁。打席には4回に本塁打を放っている小山を迎えた。カウント2ストライク1ボール。この時、平石は迷っていた。
ベンチから見た外野は遠近感がつかみにくい。あらかじめライトに下がるよう指示を出したものの、どうも不安が残る。「結構下がっていると思うけど、もっとライトをうしろへ下げるべきか」と。
ふとスタンドに目をやる。いつものように球場入りした時点で清水の姿を確認しているため、どの場所にいるかは把握している。だが、観客数の少ない地方球場と違って、大観衆が詰めかける甲子園では、とてもじゃないが清水の表情をくみ取ることはできない。
「ええんや、それでええんや」という平石にとって精神安定剤となっていた清水との"阿吽の呼吸"が取れない。もっと下げるべきか、それともそのままか......。平石は迷った挙句、ライトにもっと下げるように指示を出した。
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