2019.06.09

平井正史コーチが敗戦投手に愛のムチ。
「ほかに投げたい選手はいる」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

【連載】チームを変えるコーチの言葉~平井正史(3)

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 エース格の山岡泰輔に加え、山本由伸、榊原翼と活きのいい若手が伸びつつあるオリックス先発陣。守護神・増井浩俊が中心のリリーフ陣でも近藤大亮、澤田圭佑ら若い投手の安定感が増している。そんなオリックス投手陣でブルペンを担当する平井正史は、一軍コーチ就任当初、若干の戸惑いを感じていたという。二軍で2年間の指導経験もあったのに何故なのか……。本人に当時の心境を聞いた。

山本由伸や榊原翼など、成長著しい若手投手陣を陰で支えるオリックス平井正史コーチ「自分としては『まだ早いな』と思ったんです。二軍で2年も経験させてもらっていた、じゃなくて、『2年しか』という感じでしたし、それもまだブルペンしか経験していない。本当に一軍のコーチとしてできるか、不安でした。ファームは育成の場、”上”は結果を求められる場所で厳しい世界、ということは理解していましたから」

 不安を取り除くため、平井はチームの先輩コーチ以外に現役当時の指導者にも話を聞きにいった。中日時代の投手コーチでブルペン担当だった近藤真一である。

 近藤は高校出1年目の1987年、プロ初登板の巨人戦でノーヒットノーランを達成。華々しくデビューした左腕だったが、肩・肘の故障に悩まされて94年限りで引退。その後は中日で打撃投手兼スコアラーを務め、スカウトを経て2003年にコーチに就任する。ちょうどその年にオリックスから移籍した平井は、以来10年間、指導を受けていた。

「『こういうときにはどうしたらいいですか?』って近藤さんに聞いて、いろいろと教えてもらいました。それはそのまま、今の自分の財産になっています。でも、コーチとして何を教わったというよりも、現役時代、近藤さんが見守るブルペンで、自分が経験したことのほうが大きいんですよ。

 試合の流れ、自分のポテンシャル、それと相手との対戦成績だったり、相性だったり……そういうことをみんながわかっているブルペンでしたから。たとえば、電話がかかってきてピッチャー交代の時、電話が鳴っただけで、『次、お前じゃないの?』って言い合うような。試合の流れをみんながだいたいわかっていて、ブルペンの中でまとまりがありました」