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平井正史コーチが悩んだ理想と現実の差
「自ら選手を誘うのはやめた」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

【連載】チームを変えるコーチの言葉~平井正史(2)

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 二軍コーチとしての2年間を経て、一軍に昇格してから今年が3年目――。オリックス投手コーチの平井正史は順調に指導者経験を積んできたが、かつて、師匠に当たる山田久志はこう言っていた。

<アイツはいいコーチになると思うよ。先発をやって、リリーフもやって、優勝の喜びも、故障の辛さも知っている。いろいろ経験しているから、ファームのコーチは適任。まあ、口下手でオレみたいにはいかないと思うけど(笑)>

オリックスのコーチとなり5年目のシーズンを迎えた平井正史オリックスのコーチとなり5年目のシーズンを迎えた平井正史 冗談交じりにさらりと不安材料を指摘していたのだが、実際のところ、コーチ就任当初、選手とのコミュニケーションはどうだったのか。失礼ながら、師匠の言葉をそのまま本人にぶつけてみた。

「いや、全然大丈夫でしたよ。ずっと大丈夫ですから、今も。ただ、言葉というものはすごく難しいものだと思うので、選んでしゃべることもあります。それに、選手に話をするときに今まで経験あることはスッと言えますけども、ないことというのは自分でもっと勉強しないといけないなと思います」

 現役引退後、すぐにコーチとなった平井は、それこそ勉強する時間を十分に取れなかった。選手とのコミュニケーションに支障はなかったものの、そもそもコーチとはどういうものか、理解できていなかった。

「選手の時の自分と比べてしまっていた、というのが最大の反省点です。まして、このプロ野球の世界は結果がすべてなので、基本、自分自身の一番いい時の状態を選手に求めることが多かった。ですから、決して言葉には出さないんですけど、なんでこれぐらいができないんだと思ってしまって......そういうもどかしさはすごくありました」

 何かと手探り状態だった就任1年目。いわゆる"残留コーチ"として、あまり試合に投げない若い選手を指導することが平井の主な役目だった。先輩コーチや球団からも「まずは選手を見ることが大事だ」と強く言われていたため、観察に時間をかけた。その上で「こうした方がいいよ」とアドバイスしても、二軍の若い選手の場合、即行動に移らないこともある。そこでときには、半ば強制的に動かすケースもあったという。

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