平井正史コーチが悩んだ理想と現実の差
「自ら選手を誘うのはやめた」 (3ページ目)
「というか、そういう方法じゃないと、基本的に二軍の若い選手はやらないんですよ(笑)。やらないというより、続かないと言った方が正解かもしれない。なぜ続かないかというと、取り組んだことに対して、すぐ結果を求める選手が多くて、それまでの過程を省みないからです。変えてよくなる、変えて悪くなる、そこだけが気になっている。だから本当に継続させることが一番難しい」
とくに継続が難しいのが、秋季キャンプ、春季キャンプにおけるフォームづくりだった。平井のアドバイスに対して「いいですね」と応じ、「やってみたらよかったです」と納得した選手も、あまり積極的に取り組まない。毎日、コーチの自分の方から「やろうぜ」と誘わないといけないのか......と嘆く時が増えた。
理想は、選手自ら「お願いします」と言ってきた段階で初めて手伝う、という流れだったが、そうなることはなかった。そこで、あきらめたわけではないが方針を変え、一切、自分から誘うことをやめた。すると「お願いします」と言ってくる選手はいるのだと気づかされた。
「あまりにも選手にくっついて、こっちから誘っていたら、選手が自分で考えなくなってくるんですね。やはり、自分で考え出したフォームを、自分で考えた練習方法でつくっていく、というのが一番身につくはずなんです。そのヒントを与えてあげるのが僕らの仕事かな、と思います」
二軍コーチ2年目の平井は常にチームに帯同し、試合中はブルペンを任された。ゲームの流れを見ながら5~6人、ときには7~8人の投手を使い回すことをはじめ、すべてが勉強だった。1年目と比べて若干、立場は変わったものの、指導者としての手応えはまだなかった。二軍は選手を育成する場であると同時に若いコーチが学ぶ場、というイメージがあるが、実際にそうだと平井は言う。
「若いコーチがファームで学ぶ、というのはその通りだと思います。2年間、本当にいい勉強をさせてもらいました。そのなかでファームの選手に関して、一軍から落ちてきて二軍の試合で投げる場合と、若手が投げる場合ではまったく違う、と認識しておく必要があります。とくに新人はアマチュアから入ってきて、ほぼトーナメントしかやっていないところから1年間のペナントレースなので。体づくりもそうですけど、プロ野球選手としての基本を育てる、という意味でファームは大事なのです」
つづく
(=敬称略)
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