平井正史コーチが敗戦投手に愛のムチ。
「ほかに投げたい選手はいる」 (2ページ目)
そして、平井はこう続けた。
「理想ですよね。コーチが何も言わなくても選手が勝手に動いてくれるというのは。そういう流れをつくってくれたのがブルペンコーチの近藤さんであり、ベンチコーチだった森繁和さんであり、この両コーチの信頼関係。それと結局、使い方が一貫していた、ということでしょう。全員が調子いいということは、まずありえないことだとは思いますが、当然、うちのブルペンも目指すべきところではあると思います」
周りで見ている者は「出てくる投手全員が常に調子がいい」と思い込んでいる。とくにファンは信じ込んでいる。だが、なかにいるブルペンコーチからすれば、その状態をつくること自体、簡単ではないのだ。まして、全員の調子がよくても、好結果で終わるとは限らない。増井クラスの守護神でも、シーズンを通してみれば失敗することもあるが、たとえば、抜擢された若手が打たれて負けた場合、コーチとしてどんな声をかけるのか。
「基本的には、『やられたらやり返せ』ということです。この世界はその気持ちがないと続けられませんから。負けたほうの数字としてはもう取り返せないので、だったら、次に勝ちをつけるしかないんですよね。1敗したとしても、1勝すれば勝率5割に復帰するわけで。だからもう本当『次にやり返せ』しかないですよね、まずは」
やり返すためにも、「やられた場面」の振り返りはどのように行なっているのだろうか。試合の負けも背負い込んだ場合、次に向けて気持ちの切り替えも大事になってくる。
「たしかに振り返りは必要ですし、言うべきところは言います。ただ、正直に言って、"たら・れば"になってしまうので、言い方に気をつけないといけない。そこで僕がよく言うのは、『自分のいちばんいい球を選択して打たれたんだったら納得がいく。同じやられるなら、2番目、3番目に自信のある球でやられるんじゃなくて、いちばん自信のある球を投げてやられろ』と。『自信を持って投げてやられるんならいいよ。でも、半信半疑で投げてやられるのはやめてくれ』とも言いますね」
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