元DeNAの白根尚貴がコーチへ転身。
亡き母との思い出の地で再出発 (3ページ目)
手応えを胸に臨む7年目のシーズン開幕直後に、思わぬ一報が白根に影を落とした。
昨年4月に母・みゆきさんが帰らぬ人となった。女手ひとつで育て上げてくれた肉親を失った喪失感は、想像を絶するものだったに違いない。
「母を亡くしたことで、気持ちの整理に時間がかかったかもしれません。たくさんの方々から『気の毒だね』と労わっていただきましたが、プロである以上、そこは言い訳になりません。戦力外になったのは、100%自分の実力不足が原因なので」
指導者に転身して数カ月。選手たちに繰り返し伝えている言葉があるという。
「『指導者をうまく使ってくれ』と伝えています。あまり聞こえのいい言葉ではありませんが、成長するために、どんどんコーチを利用してほしい。彼らの目標であるNPBの環境についても、積極的に聞いてもらえたらいいな、と思っています」
規模の違いはあるものの、給与を得ながらプレーする独立リーガーは"プロ"として扱われる。熾烈な競争社会で戦ってきた経験から、こう付け加える。
「結果を出すためのサポートは監督、コーチが全力でします。けれどもプロである以上、結果に対して責任を持つのは自分自身。指導の合う、合わないは必ず生じるものなので、複数いるコーチをうまく使って、アドバイスを取捨選択していってほしい。その代わり、結果が出なかった時に指導を逃げの理由にするのはやめようと伝えています」
今年で26歳。指導者陣最年少として、自身の役割を語る。
「河原(純一)監督をはじめ、NPBの第一線で長らくプレーしていた方々は、非常に優れた感覚論を持っています。けれども、NPBを目指している選手が、理解が不十分なまま取り入れようとするとうまくいかないこともある。僕は輝かしい活躍はできませんでしたが、曲がりなりにも7年間積み重ねた経験があるので、実演も交えながら噛み砕いて伝えていきたいと思っています。指導者と若い選手たちの橋渡しができれば......」
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