愛されて四半世紀。福浦和也が語る「最下位指名からの2000本安打」 (4ページ目)

  • 村瀬秀信●文 text by Murase Hidenobu
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 不動の一塁手がDHとなり、代打とチーム内での役割が変わっていくなか、43歳となったベテランは、形が変わろうとも、その1打席に掛ける準備への姿勢は変わらない。

「準備も練習もこれでいいというものはないと思うんです。若い時はがむしゃらに練習をしても、それに耐えられる体力がありましたが、年を重ねていくとそうはいかない。身体のコンディションも、日によって全然違いますからね。今日調子がよくても、翌日には『バットが重い』『身体が重い』となってしまうことも珍しくない。身体の調子を見極めながら、今日はどれぐらいやれば、一番いい状態で打席に向かえるかですね。

 年齢を重ねていくと、やっぱり凡打の内容が変わってきたように感じることがあります。以前まではいい当たりができていたものが、最近では三振が増えていたり、差し込まれていたりします。相手の攻め方を見ても、年を取るとついていけなくなる"速い真っ直ぐ"の割合がやっぱり増えています。

 僕自身、年齢のことはあんまり言われたくないけど、周りはそうは見てくれませんからね。だから、僕は逆に速い真っ直ぐを狙いに行きますよ。まだ引っ張れますから(笑)。肉体で衰えるところは、頭の方で補うようになっていると思います」

 一般的にベテランになってからの2000本は、記録達成を区切りにして引退する選手も少なくないなか、福浦は来季も現役を続けることを選んだ。

「辞める選択もなきにしもあらず......でした。だけど、もう少しやりたかったんです。今年も夏場に二軍に落ちました。朝は早いし、グラウンドはめちゃくちゃ暑いし、体力的には厳しいですよ。だけど、僕はそこでも野球の楽しさというものを感じることができた。もちろん、一軍でやるのが当たり前でなければいけないんですけどね。

 やっぱり、あのマリンの大歓声を聞いていたら、このままでは終われないですよ。この人たちの前で1本でも多くヒットを打ちたい。リーグ優勝を果たして、ZOZOマリンで井口監督を胴上げしたいという心残りがどうしてもありますからね」

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