「引退試合でスタメンだったら...」
後藤武敏が語る松坂大輔との舞台裏 (2ページ目)
―― 自分で決断して引退できたということですね。
「本当に幸せですよね。そういう思いで辞められたから。今は『もう1年現役で......』とか考えられない。だから幸せ者です。それくらい毎日バットも振っていましたから。もう満足ですね」
―― "松坂世代"という言葉とともに歩んできた野球人生でもありました。どのように感じていますか?
「僕はうれしかったですね。ほかのどの世代よりも影響力のある世代というか、野球に詳しくない人たちでも『オレ、松坂世代』というだけで会話が弾む。選手としても頑張って活躍すれば『松坂世代の後藤』と取り上げてもらえましたし。僕らはお互いが切磋琢磨して、松坂に追いつけ追い越せという思いでやっていました。僕はすごくやりがいを感じていました」
―― 松坂投手との出会いは覚えていますか?
「中3の時、シニアの全日本予選で対戦しているんですよ。予選の決勝でした。結果は僕らの負けですよ。ヒットを1本打った記憶はあります。たしか右中間への二塁打でした。だけど、その時は敵チームの中のひとりという印象でしかありませんでした。それより横浜高校に入学して、初めての練習日の方が衝撃的でしたね。投球練習を見たらメチャクチャ球が速いし、体もがっしりしているし、『えっ!』の一言でした。とにかくすごいという言葉しか出てこなかったです」
―― 後藤さんも然り、横浜高校に集った球児というのは『我こそは一番』という各地のツワモノばかりだったと思います。松坂大輔という存在に出会って、嫉妬心みたいなものは生まれなかったのでしょうか?
「なんていうか、松坂ってホント、出会った時から今の今までずっと変わらないんですよ。高校の頃も、僕らはアイツがスターになっていくのを間近で見ていました。野球選手としての松坂は変わっても、松坂大輔という人間はずっと同じ。偉ぶらないし柔らかいし、誰に対しても同じように接する。つくっているとかはなくて、素でそれができているんです。20年以上も(笑)」
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